第15話

side 湯島秀人





「豊田保の現在地は?」


挨拶抜きの質問に中井は淀みなく答えた。


『国道を海岸線に折れて近くの別荘地に向かっています。』


やっぱりか。


「一緒にいる女は成瀬組のお嬢だ。」


『へ?愛人じゃないんですか。』


「まだ中学生だよ。」


瑠璃と同い年の筈だからな。


『マジっすか。わかんねえモンだなぁ。女は怖い。』


中井は『化けるもんだ』としみじみ言いやがる。まあな。俺も理性を持って行かれそうになった。

考えてみりゃあまだ中学生。俺も修行が足りねえ。


「逃がすな。保護して成瀬に帰す。」


『うす…。』


「なんだよ。」


もの言いたげだな。


『いや、若頭が瑠璃お嬢以外の女に興味を持つとか珍しいので。』


「…あ?」


プツン!


いい逃げしやがった。


「うちのシマで悪さしてる薬の売人に拉致られたんだ。放置は出来ねえだろ。まして瑠璃のダチなんだし。」


「同じ龍聖会の成瀬に恩を売るのも悪くはないですしね?」


俺の言葉を冷やかすように樋口が言葉を添えた。


「るせえ!とばせ!」


俺は後部座席から運転席を蹴飛ばすと先を急がせた。

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