第13話

side 湯島秀人





「まさか豊田保を野放しにはしてねえよな!」


『大丈夫です。一応北川の運転で中井さんが一緒に。後をつけさせてます。』


「逃がすな。女は成瀬涼子だ。」


「は?成瀬のお嬢が何でまた!』


知るかよ。


「アイツに拉致られたんなら、見ちゃイケねえもんを見たって所だろ。」


『薬の受け渡しですか。』


「…かもな。」


推定でしかないが。


「今どこだ?」


『国道を東に向かってるとさっき電話がありましたが。』


不味いな。家に連れ帰る気か。


「豊田は独り暮らしか。」


『いえ、両親と同居してますし使用人もいます。まさか自宅にはもどらないでしょう。』


そうか、なら、


「途中立ち回りそうな場所を教えろ。

別荘や秘密を守れそうな定宿。」


アイツのプライベートは調べあげてあるはずだ。


「うす。お待ちを。」


樋口は数ヵ所立ち寄りそうな場所を口にした。

駐車場で樋口の車に乗り込んだ俺は、


「女連れで遠くまでは走るまい。

ここから一番近い住所に向かえ。」


『…うすっ。』


なにか言いたげに俺を見たが結局飲み込み、樋口は車を走らせた。

俺は携帯を取りだし中井を呼び出す。


逃がすなよ。

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