第12話
side 成瀬涼子
ドサリとどこかに投げ出された感覚で意識が戻る。
それでもしばらくじっとして目を瞑ったまま周りの気配を伺うのは、長年の組員達からの教育の賜物だ。
『もし、拉致られて状況がわからないときはじっと動かないこと。』
死んだふり作戦で状況を掴み、隙を見て動けと言うのが組員達から受けた教育。幸い手足の拘束はない。
靴も履いてる。
足首にストラップの付いた凝ったデザインのハイヒールだから脱げはしないが…脱ぎにくいし走り辛いだろうな。
そっと頭を上げるとズキンズキンと首筋が痛い。
首には大事な神経が沢山あるらしいし、まったく、何で首を攻撃するかな!
首に傷がないか調べたいが大きく動くのは危険だ。
耳が拾う音から多分車の後部座席だとはわかっていた。
『さて、どうするかな。』
聞こえた野太い声に体が硬直した。気付かれた?
息を止め次の言葉を待つが聞こえるのは車のエンジン音のみ。
カーラジオとか、CDとかかけてくれればこんなに神経使わないで済むのに!
どうやら車内にいる男の独り言だったらしく次のセリフは無い。
全く紛らわしい!
彼の声に答える声がないと言うことは
運転してるのはこいつ。
私以外の同乗者はいない。
ゆっくりと目を開ける。
目の前には車の助手席のシート。うつ伏せで顔は横に向いてる。
視線を運転席に移せば、運転手の頭と少しだけスーツを着た体が見えた。
「やあ、お目覚めだね。」
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