第10話
side 成瀬涼子
ファッションショーが始まる1時間前、私は昨日見合いした男とホテルで落ち合いSホテル鳳凰の間の前に来ていた。
昨日の見合い相手…なんて名前だっけ?なんだか顔の印象も薄かったんだけど。これも湯島の若頭の呪いだろうか。
「どうかした?」
鳳凰の間の前で立ち止まった私に笑いかけたのは昨日のお見舞い相手。多分。一晩置いたらイケメンに見えるかと期待したがやっぱり薄っぺらな優男にしか見えない。ヤバイな早目に断らなきゃ。
次のイケメンに期待しなきゃだ。うん。
「君のおば様って、美人モデルのミキだよね。楽しみだな。」
「そうですか。
なんなら叔母を紹介しますけど。」
「焼きもち?大丈夫。僕には君しか見えてないから。」
「‥‥‥」
…是非とも他の人を見て欲しい。
「涼子!」
鳳凰の間に足を踏み入れたとたん、目敏く私を見つけて駆け寄る未紀叔母さん。
「ワンピースが良く似合ってるわ。で?」
未紀叔母さんは私の隣の優男に目をやる。
「はじめまして風間幾真です。」
そうそう!そんな名前だった。
風間幾真は美人の未紀叔母さんに見とれている。
「ありがとう。涼子を送ってくれて。涼子は舞台に立たせるから退屈でしょ。ハンナ!」
「ハイ!」
未紀叔母さんが呼んだのは背の高いスレンダー美人。金髪碧眼。ヨーロッパ系。モデルさんかな?
「ミスター風間のお相手をお願い。」
「ハイ。コチラへドウゾ。」
片言ながら日本語を話す彼女と風間幾真は鳳凰の間から退出した。
「なに、あの腑抜けた男は。」
風間幾真が部屋を出た途端に辛辣になる未紀叔母さん。
「昨日のお見舞い相手。」
「あんなのしかいないの?」
「ハハハ…」
やっぱり風間幾真では未紀叔母さんのメガネには叶わなかった。
髪と化粧を直されて舞台に上がるタイミングを覚える。
「未紀!」
彼女を呼ぶのは新進気鋭のファッションデザイナー。志藤兼。
長身だが国籍不明で年齢不詳な感じ。もちろん日本人だが年はよく知らない。未紀叔母さんの好みはよくわかんない。
邪魔にならないように会場の中を眺めてふとそれに目が止まる。
何だあれ?てか、何してるんだろ。
あ!視線が合った。
なんかヤバイ感じ?
後退る私は咄嗟におば様の名前を叫ぼうとした
「っ!」
首筋に走る激痛に私は意識を手放した
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