第6話
side 成瀬涼子
助けてくれたイケメンはお礼を言っても立ち去らず
「さっきのは見合い相手?」
なんて聞くから、仕方なく
「お見合い相手は別の人です。」
素っ気なく答えた。早く消えてくれないと、そろそろ煙草を吸い終わった小島が帰ってくるんだけど。
小島が彼を見たら大騒ぎしそうだし、さっきみたく目立つのはゴメンだ。早く消えてよまったく。見合い前なのに。
彼はヤクザ相手に怯まなかったけど、さすがに私がヤクザの娘だと知れば逃げ出すだろう。そんな風に思ってた。
「涼子お嬢!」
「げっ!!」
最悪。帰って来たのは山崎だった。
当然の様に私の前に座る彼の姿を見て固まる。
「山崎、彼は…」
私を痴漢?から助けてくれたんだと説明しかけたら、
「これは、湯島の若頭。」
山崎は深々とイケメンにお辞儀した。
湯島のって瑠璃子の兄貴?
山崎の挨拶に
「涼子ということは、成瀬のお嬢か?」
そう言って私の顔をマジマジと見た。
私の名前に反応するとか、瑠璃子から話を聞いてるのか。
「はじめまして成瀬涼子です。」
仕方なく立ち上がり頭を下げた。
会派の上の人なら挨拶しとかないと親父が困るしな。
「嫌々挨拶されてもな。」
どうやら適当な挨拶が気に入らないらしく苦笑して文句を言われた。イケメンはプライドが高いな。
「申し訳ありません。お嬢は見合い前でナーバスになってるんで…。
相手がかなりの男前で。」
山崎が素晴らしい言い訳をした。
あんた天才!
「はい。凄くイケメンなんです。」
湯島の若頭に比べたらまったく敵わないけどね。
この際山崎の口車に乗っておこう。
にっこり笑うと湯島の若頭の顔が歪んだ。しまった!
イケメンは他のイケメンを誉めると気を悪くするらしい。
山崎と顔を見合せ視線で責任を擦り付け合う。
私のせいじゃないし!
「涼子!そろそろ見合いの席に…あら!」
派手なオレンジのつけ下げを着て現れたのは成瀬深雪。私の母だ。
あんた娘より目立ってどうすんのさ!
私のキツイ視線をスルーして
「ご無沙汰してます。湯島の若頭。お見合いですの?」
興味津々の顔で彼に聞いた。
さすがにオバタリアン(死語か)遠慮も容赦も恥じらいも無い。
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