第4話
side 成瀬涼子
時間より少し早くお見合い場所に着いた私。
「少しお待ちを。若頭に連絡して来ます。」
バタバタとロビーを走り回る山崎は優雅さの欠片もない。
似合わない。山崎の極悪面と高級な桜ホテル。
「お嬢。なんか落ち着きません。」
着いてきた
いつもアロハかポロシャツ姿しか見ない小島が今日はスーツだもんね。
似合わない。七五三みたいだ。千歳飴を持たせたい。
「良いよトイレ行って。人が多いし一流ホテルだからトラブルも無いでしょ。ただしタバコは喫煙所でね。」
いざというときは叫ぶからと私は笑って小島を解放した。
「あざーす。1本吸ってすぐ戻ります。」
小島は深々と頭を下げて喫煙室にすっ飛んでいった。余程吸いたかったらしい。くすくす笑ってる私に黒スーツの男が声をかけてきた。
「成瀬のお嬢さんだよね。」
途端に私の眉間に皺が寄る。護衛二人を後ろに連れて如何にもその筋とわかる格好に私の周りに座る人達が然り気無く席を立つ。
「誰?」
座ったままで私に声をかけた男を無遠慮に眺めた。年は私より随分上。
オジサンと呼んで良いくらいだ。スーツに隠してるけどお腹は弛んでるな。
不健康そうなくすんだ肌は不摂生の賜物。何より顔が残念。
相手にする価値なしと横を向いた。
「僕を知らない?君の見合い相手の1人なんだよ。」
ニヤニヤと笑い図々しく隣に座る。
「私の手元に来たお見合い写真は軽く70を越えてます。余程のお相手でなければ無理です。」
さっさと帰れ。あんたは論外。
言外に言ってるのに図々しくも居座る。
「70か。凄いな。頑張りがいがある。君、美人だし。」
なに当たり前の事をイッテんのよ。てかあんたは誰?頑張る必要ないから!
「可愛いねぇ?」
ずいと体を寄せ私の手を握った。
「ちょっと!」
触らないでよ気色悪い!文句を言おうとしたら
『俺の女に触ってんじゃねえよ!』
低い声に遮られた。
「…へえ。」
そこに立つのは濃紺のシングルスーツに趣味の良いネクタイ。
一見出来るビジネスマン風の見事なイケメンだった。背も高い。私より軽く5つは上かな。目の保養だ。
見知らぬイケメンは如何にもヤクザなオジサンをひと睨みで蹴散らした。
てか、後ろにいたはずのおじさんの護衛は何処なのさ?
首をかしげてると
「大丈夫か?」
イケメンはテーブルを挟んで反対側のソファーに座った。
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