第2話

side 成瀬涼子


私の名前は成瀬涼子なるせりょうこ。現在中学三年生。


今日はお見合い。

15でお見合いとか早すぎなんだけど、いわゆる家庭の事情ってやつ。

2人姉妹の姉の亜紀あきがサッさと男を作って出て行った煽りをうけちまったって訳。

うちは代々入り婿を取って稼業をついでるからね。

関東龍聖会成瀬組。

私自身はそれなりに美人だし焦らなくても平気なんだけど。

結構醒めてるから実家暮らしで入り婿なんて楽かも知れないとか思う。

予約しといて高校卒業後結婚の流れかな。


「お見合い写真で一番いい男と見合いする。」


母の深雪みゆきに言ったら、

さすがに私の娘!とか笑われた。

聞けば母も父を顔で選んだみたいだし。だってねえ。どうせ見合いするならイケメンが一番。

釣り書きとかみてもどれもたいして変わらないし。見た目重視よ。

出来ればバカじゃなきゃいいな。

で。私に甘い草食系男子。

ふふっ、と笑うと入ったばかりの新人の山崎勘助やまざきかんすけが呆れた顔を見せる。


「醒めてますね、お嬢。」


「まあね。旦那に期待はしないわ。私を甘やかせて好きにさせてくれるなら浮気したって構わないしね。」


「女子中学生の言葉じゃないっす。」


「ほざけ。私は現実的なの。」


そう。男なんて腰抜けばっかり。

小学生の頃から美少女だった私はモテモテだった。跡継ぎはお姉ちゃんだったし私自身は組を継ぐ気も無かった。

ごく普通に恋愛してごく普通に結婚するつもりだった。

なのに私が成瀬涼子だと知ると皆が逃げ腰になる。

私に気があった筈の男の子が私より頭も顔も劣る女と付き合い出す。

そりゃあ私は気が強いし可愛げもない。

喧嘩だって酒だって組員に仕込まれたから強いしね。けど、一人くらいヤクザのお嬢じゃなくてただの成瀬涼子と言う私を見てくれたって良いじゃないさ!

ま、甘い夢よね。

薄いピンクの振り袖を着た私はおしとやかににこりと笑うと


「行きましょうか山崎。」


上品に言って見せる。

どうよ。お嬢様に見えるでしょ。

山崎は失礼にも、ゲッ!と顔を歪めると


「承知。」


渋々返事をした。

なんだよ承知って。ハイと言えっ!

小島こじまと言う組員の運転で私は桜ホテルに向かう。

この辺りじゃあ一番デカクて格調高いホテルだ。

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