第1話
Side 湯島秀人
俺の名前は
23才独身の若輩ながら、湯島組の若頭を務めている。
組の仕事は肌に合ってるらしくなかなか面白い。俺が嫌気をさして逃げ出さないように側近の樋口がうまく裏で動いてるんだがな。
なにしろジイサンが死んで直ぐ親父が組長になって俺が若頭に就いたのが二十歳の頃。
自慢じゃねえが俺は飽きっぽい。
飽きずに続いたのは中2~高3まで総長を務めた『鬼神』って族位だ。
女にも直ぐ飽きる。
故に、決まった女も持たない。学歴も大学中退。若頭しながら大学続ける方が無理だったんだけどな。
そんな俺は近頃憂鬱だ。
『そろそろ身を固めろ。』
親父がうるさい。
俺と同い年の遊び人、綿貫組の息子が嫁を取りガキが生まれてからは特にだ。アイツは下手打って出来ちゃった婚なんてしやがった。その陰で愛人まで作ってるしな。
だいたい女に飽きっぽい俺が嫁さんなんかもらえるか?無理だろ!
綿貫よりモテる俺はきっと何人も愛人作って家庭崩壊するのが目に見えてる。まったくいい迷惑だ。
『お前が気に入った女でいいから。』
事務所の机に山と積まれた見合い写真。1人くらい惹かれる女がいるかと思い眺めて見たものの
「…無理。」
ひとりも気に入る女がいない。
「ええ~っ、この橋本組のお嬢さんなんて美人じゃないですか!」
開きっぱの見合い写真を見た
コイツは目先がきいてなかなか使えるから最近側に置いてる2つ下の組員だ。北川の手には見合い写真。そこには薄紫の振り袖を着た美人が写っていた。
「あのなぁ、ソイツ有名な整形美人。
オマケに性格最悪。ストーカー傾向強いし関わるとロクな事ねえぞ。」
「ゲッ!マジっすか?」
北川があわてて写真を閉じる。
組関係の女は大抵調査済み。5才下位まで調べたが気に入る女はいない。
湯島はそれなりの金持ちだが広域指定暴力団の湯島組の息子に嫁に来るなんて女は大抵問題を抱えてる。
「一生独身でいい。」
最近の俺の口癖だ。
「無茶言わないで下さい。跡継ぎで湯島が揉めます。」
「樋口か中井。どっちか嫁をもらってその子が組を継ぎゃあいいだろ。」
湯島には
俺に何か有ればどちらかを若頭に就ける筈だ。俺の後はコイツらのガキに譲りたいんだが、いかんせん二人とも独身で女っけゼロ。
「甲斐性なしが。」
愚痴る俺に北川が
「若頭がそれを言いますか。」
あきれた声を出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます