告発原文03 刑事が事情聴取にやって来た
翌朝、2月17日(金)、私は中川警察本署へ電話を入れました。妊婦殺人事件担当刑事に出てもらいました。昨晩の出来事を手短かに話したあと、もしくだんの男が殺人事件と関係があるなら思い当たる節もあるので、捜査に協力できる旨を申し出ました。
思い当たる節というのは、襲われた時間帯が6時という、家族がいつ帰ってきても不思議ではないときだったので、あの男はきっと、私の父が入院して私がひとりで留守番をしていることを知りうる立場にある人物に違いないと推測されたのです。それは近所にすむ知人関係の者に違いありません。
刑事と話を終えたあとで、私は父の病室へ出かけました。そこで父母から次のことを知らされました。
「そういえばこの時期、***(=あるボランティア団体)の若い男の子達が、ホケンと通称されるものの集金に回っている。うちも一口千円の掛け金を毎年払っている。おまえが、襲われそうになったというのは、その集金担当の男の子ではないのか」
2月20日(月)。妊婦殺人担当の刑事が、わたくし宅に事情聴取に訪れました。その刑事は滝本と名乗る、私と同年代の若い刑事でした。私は彼に、くだんの男は***のメンバーである可能性がある、と伝えました。
そして、***のリーダーをしているK.Uさんの住所を告げ、この人に聞けば詳しいことがわかるのではないかといいました。滝本刑事は、これ幸いと嬉しそうな顔をしました。
「それではK.Uさんのところへ調べに行ってくる、結果を知らせにまた戻って来るから待つように」といって、立ち去りました。
数時間後、滝本刑事ではない別の五十年配の刑事が現れました。インテリやくざのような風貌をした男で、私は一目見たとき、「怖い」と感じました。この刑事は名前を名乗らなかったので、仮にX(=エックス)刑事と呼ぶことにします。
彼は、私に口をさしはさむ余裕も与えず、とうとうと次のようにまくし立てました。
「いまK.Uさんのところで聞いてきた。問題の男は、確かに***のメンバーだった。
あなたの家を訪れたのはホケンの集金が目的だった。ところが、あなたがセールスマンと勘違いして、玄関を開けてやらなかったので、怒ってチャイムをがんがん鳴らしただけだ。あなたを襲おうとしたのではない。
男はいったん家まで戻ったが、集金を早く済ませてしまいたいと思いまた出直してきた。どこかに隠れていて、警察をまいてきたのでは決してない。悪いのはあなたのほうだった。
また、妊婦殺人とも一切関係がない。安心していい。
今度あの男がきたら、あのときは済まなかったと謝っておけ」云々。
私はただ黙って、「それはどうもお騒がせしました」と頭を下げ、刑事はなぜか嬉しくてならないような表情で帰っていきました。
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