告発原文02 二度目の通報にも遅れる警官

首をかしげながらも、私は再び玄関を厳重に戸締りし、家の中に入りました。そして近くに住む姉の家に電話を掛けました。不審な男が来て警察を呼んだ旨を話していると、その最中に、再びあの男が玄関先に舞い戻ってきたのです。

「***(=あるボランティア団体の名称)のものです!集金に来ました!」

自分は怪しいものではないといわんばかりに大音声で名乗りをあげると、口調の礼儀正しさとはうらはらに、玄関のガラス戸を激しく破らんばかりに叩くのです。


私は姉に助けに来てくれるように頼み、そのあと110番に再び連絡しました。

通報を終えたあと、興奮状態の男に向かって、「警察を呼びましたよ!」と一喝すると、男がガラスを破って侵入することを恐れ、2階に避難しました。さっき出たばかりの警官がすぐ戻って来てくれるはずだから、2階に逃げていればそれまでは持ちこたえられるだろうと思ったのです。


2階の窓から庭を見ると、男がちょうどこそこそと逃げていくところでした。玄関の外灯に照らされて姿がありありと見えました。男は、門を出るとき、玄関のほうを振り返って見ました。そのとき、男がVネックの薄いカーディガンという、真冬の夜に外を出歩くとは思えない軽装であることを、私ははっきり見ました。襟巻き一つしていません。また、集金と名乗っていたのに両手とも手ぶらで、また、素手であることも。


男が門を出て東へ向かった直後、姉夫婦が西から駆けつけてきてくれました。義兄は玄関を入って来るなり、「隣の資材置き場の陰から、若い男が自転車で慌てて飛び出していった。あの男が怪しかったが、違うかね?」その若い男は、茶色のジャンパーを着ていたといいます。

私が庭で目撃した男と、姉夫婦が目撃した自転車の男の年格好を突き合わせてみると、ぴたりと一致します。服装以外は。

わたくし宅の東隣は、当時建築中の資材置き場になっていました。隠れるには絶好の場所です。

第一の通報のあと、どうやら遠くへは逃げずに、男はずっと資材置き場に隠れていたらしい。警官が来てやがて行ってしまったのをバイクの音で知ると、もう大丈夫とばかり、着ていたジャンパーを脱ぎ捨て準備万端整えて、ふたたびわたくし宅へ襲いにやってきたと推測されます。


2度目の通報でも、警官はなかなか来ませんでした。なんと40分ほども過ぎた7時15分になって、警官がやっと現れました。しかも最前の派出所員とはまったく別の若い人がひとりでした。

彼は、私たちが何も聞かないのに、警官が遅れた理由を自分から話し出しました。「さっき来たのは、伏屋派出所のおまわりさんだった。遠い派出所から来たので到着が遅れてしまった。彼らは、別の重要事件が発生してそちらのほうへ向かった。それで、代わりに、もっと遠いところの下之一色派出所の私が来た。管轄外の家を探しながら来たので、こんなにも遅れてしまった」


この警官は奇妙なことを言うものだ、と私は首を傾げました。私の家のすぐ近くのT派出所員が来ているのに、それを別の遠い伏屋所員だと言うのはなぜだろう。それに、最初に来た派出所員は、妊婦殺人の犯人逮捕を念頭においてかけつけてきたのだ。この辺のような田舎で、殺人犯逮捕よりももっと重大な事件がそうそう発生するのだろうか?それに自分が遅れた理由を言い訳するならまだしも、先の通報で警官が遅れたわけまで、一派出所員である彼が知っているとはどういうわけなのだろう?


しかもこの警官は、先の派出所員と同様、わたくし宅の庭や周囲など調べてみようともせず、遅れの言い訳だけ告げるともう用は済んだといわんばかりにさっさと帰ってしまったのです。

おかしいと思いました。


(注;私の家から一番近い派出所は①T派出所で、以降近い順に②T2派出所③戸春橋派出所④伏屋派出所⑤下野一色派出所となっています。イニシャルTの派出所は二件あり、私の住所を特定されないためにTと記載しています。)


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