日記

ナニカ

2024/11/08

外に出ると、鼻を通る空気がすっかり冷たくなっていて、秋を通り越し冬の訪れを感じる。

皮膚をなでる空気も冷たくなっていて、思わず袖を引っ張り伸ばす。

成人男性の萌え袖にどこまで価値があるんだろうか。

これが同年代の女性なら可愛いと思うだろう。逆に、男性なら腕捲りの方がかっこよく見えたりする。

もしかして、男性は薄着、女性は厚着の方が魅力的なのだろうか?

であれば男性は褌で、女性は着ぐるみでも着て生活してもらおう。

そんな2人がデートをしている様を想像してみる。アニメキャラにしたってキャラが濃い2人組が完成した。すれ違ったら2度見する自信がある。

そんな馬鹿な想像をしながら、トコトコと歩いていく。

目指すは海だ。


目指すは海。とは言ったものの、今住んでいる場所からは徒歩五分もない。

そんな短い間だから、もちろん褌とも着ぐるみともすれ違わない。

──もし仮に5、時間歩いていたとしてもすれ違わないだろう。


あっという間に海に到着し、見晴らしのいいところに登って深く息を吸い込んでみる。

冷たい空気に、弱まった磯の香りが混ざって冬の海を感じさせる。

冬の海、と言葉にしたが、今年初めて感じるこの香りが、冬の海なのか秋の海なのか、はたまた異常な香りなのかは分からない。

11月8日の今日が、秋なのかというのもはっきりとしない。

暦の上では秋なのかもしれないが、秋らしい景色だったり、夏の雰囲気を残して変遷していく空気感だったり、そういったものを私はは感じられなかった。

もしかしたら存在したのかもしれない秋は、今年は観測出来なかった。

一日千秋 という言葉がある。

待っている一日が千の秋に感じるほど思っていることを表すこの言葉だ。

しかし、今現在、この言葉で長さを表していた秋はすっかり短くなってしまった。とすると、この言葉はふさわしくないんじゃなかろうか。


言葉の意味を現実が変えてしまう。


そうやって存在する言葉の意味が変わってしまって少し寂しい。

例えば、男女平等になったら【女々しい】【勝気】という言葉は消えていくんだろうか。

昔はあったね。そんな言葉に流されて言ってしまうのかもしれないと思うと少し寂しい。

けれど、それだけでは無い。

最近産まれた言葉もたくさんある。

メロい、推し活、嫌知らず。

ネットミームも含めればそれこそ毎日産まれているだろう。

新しい言葉ができる度、反発心のようなものも浮かぶし、なかなか飲み込めない、使えないと思ってしまうが、これは老いの一歩目かもしれない。

最初は慣れないのも仕方ないけれど、悪いものでは無いなら少しずつ使って飲み込んでいきたい。

とはいえ、近年の言葉や環境の変化は一つ一つを追うには早く、見て回るには広すぎる。

夏から秋、冬への変化の様に、注視していても一瞬で過ぎていく環境に、身も心も適応できず風邪をひきそうだ。


いや、これは実際に薄着で外にいて実際に風邪をひきそうになっている。


海を眺めるのをやめて住処に帰るとしよう。


変化に適応するために、休むのもきっと大事な事だ。

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