第18話

先週の木曜日の朝いちばんに、教員たちの署名が入った嘆願書は理事長宛に送付されていた。

しかし生徒からのアンケート以外の確たる証拠もなく、結果として吹奏楽部を全国大会に導いている実績もあるため、件の教員を相応の処分にできる可能性は低いかもしれない、と興津は考えていた。

その証拠に、週明けの今日には既に理事長の手元に嘆願書は届いているはずなのだが、全くリアクションがない。

もしも嘆願が失敗したら、言い出しっぺの犯人探しと、責任のなすり合いも始まるだろう。無論、そうなったら堂々と名乗り出て退職するつもりでいたが、

『……残される生徒たちが心配だ。他の先生っちも、処分を受けなければいいけど』

彼はそれだけが心残りだった。


三時限目までの授業をつつがなく終え、午後の授業の支度をした後に、昨日の残り物を詰めた弁当を急いで食べつつ、興津は五時限目の一年二組の授業内容を頭の中で組み立てる。

『……もしもここを辞めたら、あの子とも会えなくなるのか』

不意に、いつもこちらを甘ったるく見つめてくる、長い睫毛の瞳が脳裏に浮かぶ。

『結局、僕はどこまで行っても独りなのかもしれない』

今までだってそうやって生きてきたはずなのに、くるみのことを想うだけで、急に足元が崩れ落ちるような気がして怖くなる。

『……いや、僕がいなくなったら、あの子もきっと、周りの同じ年頃の子に目が行くだろう。それが普通で、当たり前なんだ。僕も間違いを犯さずに済むし、いいこんじゃないか。全部元通りになるだけなんだから、それでいいんだ』

そこまで考えて、ひどく悲しくなった彼は思考を止めると、空になった弁当箱に蓋をして、ペットボトルの緑茶を一気に飲み干した。


「あれ?誰か放送室の鍵、知りませんかー?」

教員の一人が職員準備室からこちらに声をかけてくる。

「持ち出し記録に書いてないです?」

「いやー、なんもないですね」

「誰か記名しねえで借りてったのか、しょんねえなあ」

「今日、放送部は活動するんでしたっけ?あとで聞きましょうか」

彼らの会話に首を傾げつつ、興津はカバンの中から歯磨きセットを出して立ち上がった。


四時限目の授業が終わり、昼休みが始まる。

「ミチルちゃん、おまたせ」

いつものように隣のクラスからやってきたくるみと祐華の顔を見ると、ミチルはふっと笑ってこちらに近づいてくる。

「ねえ……本当にいいの?お父さんとお母さんにバレたら……」

「いいんです。……その時は喧嘩してでも、自分の意思を通します」

揺らぐことのなさそうな固い決意の宿った言葉に、くるみと祐華はそれ以上何も言わなかった。


東棟から西棟への渡り廊下を歩くその途中で、

「あ……」

彼女たちの前に、向こう側の角を曲がってやってきた興津が現れた。

『先生……』

半袖のワイシャツから伸びる長く逞しい腕に、こちらを優しく見つめてくれる瞳。微笑みをたたえた口髭の下の薄い唇。

『……好き。本当に大好き……』

改めて見るほど魅力的な彼の姿に、くるみの心臓はぎゅっと痛くなった。

「……こんにちは」

泣きそうな気持ちを呑みこんで、彼にあいさつする。

「こんにちは。……何だ、みんな揃って。部室にでも行くのか?」

昼休みに生徒がここまで来ることは殆どないせいか、興津は少し戸惑っているようだった。

「……ええ、まあ、そんなところです」

「そうか。授業に遅れないようにな」

ミチルのお茶を濁すような返事を気に留めることなく、彼は歩き去ろうとする。

その通りすがりに、

「あの……」

くるみは思わず彼のシャツの袖を掴んでしまった。

「……どうした、牧之原」

「……」

いつもと変わらないやわらかな笑顔が、深く胸を刺したのを感じてから、

「先生、……ごめんなさい」

それだけ言ってくるみは手を離し、彼に背を向けると、祐華とミチルを追いかけた。


「……?」

脈絡のない謝罪に彼は首を傾げつつ、再び東棟への渡り廊下を歩き始めた。


「おう、来たな一年生」

「待ってたよ」

長い廊下の先にある階段を上がった、そのまた向こう側には、既に上級生たちがいた。

彼らの頭上にある看板には『放送室』と書かれている。

「お兄ちゃん、鍵は?」

「バッチリだ。化学準備室のを返すとき、こっそり持ってきたっけ」

紘輝は鍵を差し込み、扉を開ける。


人気のない廊下の空気と、気圧とにおいの違う室内の空気がまじりあう。

中にはガラスと防音扉で仕切られたスタジオと、そこを外から眺められる大きなミキサーがあった。

「ふーん、なんかガチのスタジオって感じだな。放送部、金かけてもらってんなあ」

「スイッチはここ……ケーブルの出力ジャックはこれだな……よし、ちゃんと刺さる」

「この辺のボタンを押せば、任意で放送を流す場所が選べるみたいっすね」

「『全校』っていうボタンあるけど、これ、理事長室まで入るかしら?」

「念のため、個別のボタンを全部押しましょう。そのほうが間違いありませんから」

早速がやがやとミキサーの前で話を始めた部員たちを横目に、くるみは誰も入ってこれないよう、ドアに内側から鍵をかける。

『……ごめんなさい、先生。でも、……先生ならきっと、わかってくれる……』

くるみは先程の笑顔を胸から追い出すと、自分もミキサーの前に移動して、ポケットから紙を出した。

「くるみちゃん、つっかえてもいいから、ゆっくり落ち着いて読んで」

「はい」

太陽の言葉に頷くと、祐華とミチルが背中に手を置いてくれた。

最後に大きく深呼吸をして、くるみはマイクに顔を近づける。

「……よーし、準備はいいな。それじゃ、作戦開始だ」

紘輝の合図に、隆玄がマイクのスイッチを入れた。


ぶつん、と校内放送のスピーカーが通電する音がする。

「え、やだ、なんかあったの?」

「抜き打ちの避難訓練?」

生徒たちはにわかにざわついた。

次の瞬間、

『あー、あー……き、聞こえてますでしょうか』

くるみの声は、マイクを通して全校のスピーカーから放たれた。


『……みなさん、お昼休み中に失礼します。今から少しだけ、お時間をいただきたいです』


頭の上から降ってきた聞き覚えのある愛らしい声に、興津は凍り付いた。

『……まさか、放送室の鍵……!』

先刻の教員たちの会話と、くるみの謝罪を思い出し、冷や汗が彼の額ににじむ。

彼は踵を返して放送室へと走り出した。


「……これからお聞かせするのは、現在この学校の吹奏楽部で行われている『指導』を録音したものです。……『指導』と言うと聞こえはいいかもしれませんが、これは『暴力』です。人によっては、耳をふさぎたくなる内容かも知れません。でも、これが今、わたしたちの学校で実際に、毎日起こっていることです。どうか、無視しないでください」

どうにか間違えずに読み切ることができたくるみは、ほっと息を吐く。

そこで紘輝がマイクのスイッチを切り、ジャックに繋いだmp3プレイヤーの再生ボタンを押して、ミキサー側のボリュームをぐっと上げる。

学校中に、麗が暴行を受けた一部始終の音声が、大音量で流れ始めた。


「これは……」

「……そう言やあ、こないだうちぃ救急車が来たっちゅってたっけえが、これのこんかや?」

職員室の中で、教員たちはざわめきながら音声に耳を傾ける。

「……動かぬ証拠が出てきましたね」

安倍がぽつりと言うと、隣の藁科もうなずく。


「……やっぱり、何回聞いても気分は良くないですね」

ミチルが深いため息をつく。

「今さらだけど、清水さんには許可取ってんだよな?」

「大丈夫。名前出さなければ使っていいって言ってたから。まぁ、バレちゃうだろうけどさ」

太陽の質問に、隆玄が諦めた笑みを返しつつ、首を横に振った。


「……はい、祐華ちゃん」

くるみから原稿を受け取ると、祐華は大きく深呼吸する。

「無理しないでね」

「うん、大丈夫」

祐華はきっと前を見据え、両頬を手のひらでぴたぴたと叩いた。


音声の再生が終わり、今度は祐華がマイクに向かって話し始める。

「皆さん、お食事中にご気分を害されたかもしれません。その点についてはお詫びします。……この音声の中の女子は、この日先生から、メトロノームを顔に投げつけられ、頭を殴られ、椅子を蹴倒されたうえ、背中とお腹を蹴られました。そして最後に、他の部員に対する脅しの言葉も入っています。今、吹奏楽部では、このようなことが常態化しています」

原稿を読む祐華の声は、怒りで震えていた。

その祐華から渡された原稿を手に、今度はミチルがマイクに口を近づけた。

「わたしたちは音楽が好きです。きっと吹奏楽部員も、大好きな音楽をやりたくて集まっている人ばかりでしょう。ですが、その吹奏楽部が今、ひどい状況であることは、皆さんにもわかってもらえたと思います。音楽は『音を楽しむ』と書くものなのに、今この状態では、音楽を楽しむことなんてできないと思います」


『軽音楽部、全員いるってこんか……!』

興津が心の中で舌打ちしながら職員室前の廊下を走り抜けると、あとから何人か教員がばたばたと走ってくる気配が背中に感じられた。

「興津先生!!」

安倍の声が追いかけてくるが、振り向く余裕はなかった。

『馬鹿っこんをして……!このままじゃ全員停学んなるぞ!』

上手く走れずもたつく足に半分転びそうになりながら、彼は一段飛ばしで階段を駆け上がる。


今度は太陽が話し始める。

「こちらの先生が来てから、うちの学校の吹奏楽部は全国大会の常連になりました。ですが、賞を取ることばかりに先生がこだわり過ぎて、先程お聞かせしたような、理不尽な暴力や心無い言葉で部員みんなが傷ついているのが現状です。……違反や不正があっても、告発した生徒に圧力をかけて口止めしたことも、過去にはありました」

太陽から受け取った原稿にほとんど目を落とさず、隆玄が一気にまくし立てた。

「確かにコンクールで金賞を取ることは素晴らしいと思います。でも、その金賞を取るためだけに、出来そうにもない難曲を、睡眠や勉強の時間を削ってまで練習に充てて、結果としてパフォーマンスが落ちた状態で練習に参加して、上手く出来なくて、それで暴力と暴言に晒されても、報復が怖くて黙っているしかない。こんなこと、許していいんですか?」


放送室の前についた興津は、息切れしたままドアを叩く。

「何してんだ、開けろ!!」

そこまで言って、職員室にスペアキーがあったことを思い出し、

『しまった……!』

彼は心の中で頭を抱えた。しかしすぐに気を取り直して、

「余計っこんすんなって言っただろうが!!なんでこんな、あてこともないこんすんだ!!!」

聞こえているかはわからないが、ドアに口を近づけて大声で呼びかけた。


「……先生……!」

くぐもった声に、くるみは振り返る。

「もう来ちゃったわね」

「急がないと」

祐華とミチルの言葉に紘輝がうなずいて、右手でマイクのアームを掴んだ。


「……吹奏楽部の皆さん、勝手なことをしましたが、同じ音楽を愛する人間として、俺たちはどうしても黙ってられなかった。どうか、声を上げてください。そして、先生っちと理事長先生に言いたい。……生徒が苦しんでんの、大人の都合で見て見ぬふりすんじゃねーよ!!!」


紘輝の絶叫がマイクにハウリングし、それを聴いていたすべての人間が肩をすくめた。

しかし、ほぼ同時に東棟の方から、盛大な拍手と歓声が聞こえて来る。

興津は思わずそちらを見遣り、ため息をついて首を横に振ると、諦めの笑いを浮かべた。

ほどなく、

「興津先生!」

藁科が安倍たち数人の教師とともに、スペアキーを手に階段を駆け上がってきた。

「すみません、うっかりして……」

「大丈夫だ」

彼は荒い息をしながら鍵を差し込み、扉を開ける。


ドアの開く音とともに、くるみたちはそちらを向いた。

「……どうぞ、煮るなり焼くなり好きにしてください。俺らが間違ってるなら、ですけど」

扉の先から入ってきた教員たちに、仁王立ちになった紘輝が言い放つ。

その先頭にいた興津と目が合い、くるみはわずかに身を竦める。

『……ごめんなさい、迷惑かけて』

罪悪感でそれ以上彼の目を見ることができなくなり、彼女はうつむいた。


「はっはっは!いやあ、さすが軽音楽部、やり方がロックだっけねえ!」

理事長室に通されて開口一番、くるみたちを出迎えたのは大笑いする部屋の主の声だった。

煮るなり焼くなり、とは言ったものの、内心では良くて停学、最悪は自主退学を促されるかもしれないとびくびくしながら教師たちに連行された軽音楽部員は、目の前にいる白髪の男性の斜め上の反応に、全員がぽかんと口を開ける。

「いまどき、こんだけの騒動を起こすだけのパワーがある若者もなかなかいないっけねえ。しかも自分たちの自己顕示欲のためじゃあなくって、友達や困っている人を助けたくってやったっちゅうんだから、実に気分がいいっけやあ、気に入ったよ!」

理事長――天竜孝蔵てんりゅうこうぞうは、机の上に肘をついて顎を手の甲に乗せながら、くるみたちを見る。

「ところで、どうして興津先生に、証拠が手に入ったってこんを言わなかったかね、藤枝君?」

「……余計なことするな、って止められてました。でも、どうしても許せなくって……」

それ以上の言葉が続かず、紘輝は隣の部員たちを見遣る。

「正直に言います。……素直に証拠を提出しても、何も変わらない気がしたんです」

「先生を信用してなかったわけじゃないんです。でも、先生から他の人の手に渡ったときに、証拠がもみ消されたら、って思うと、どうしても……」

「これはわたしたちだけで考えたことなんです。先生は一切関係ありません」

太陽と隆玄とミチルが、紘輝を援護した。

くるみも慌てて手を挙げ、彼らに加わる。

「あの、わ、わたしが言い出したんです!好きな人の声をmp3で録音して切り貼りして、自分への告白メッセージ作って、放送室ジャックして全校放送で流しちゃうっていう歌があって、それをマネしようって……だから、これはわたしに全責任が……」

「ああ、あれか。孫がボカロ好きなもんで聴かせてくれたよ。随分有名みたいだね」

「え、理事長先生、あの曲知ってるんですか……?」

意外な答えに、祐華が思わず言葉を発した。

「君たち若者と感覚を合わせるためには、古いものばっかりにこだわるのは良くないでね」

天竜はそう言ってにこやかに笑うと、すっと立ち上がってその場にいる全員を見た。

「……さて、ずぁ話を移すよ。先生方」

くるみたちと一緒に理事長室に入り、後ろに控えていた教員たちがびくりとしたのを、彼女たちは背中で感じた。

「金曜日、私のところに、あなた方からの嘆願書が届いた。正直、署名と生徒からの聞き取りだけでは、望むような結果に持っていくことは非常に難しい。これは私学協会に言ってもたぶん変わらないし、万一マスコミに嗅ぎつけられでもしたら、最悪うちの学校法人にダメージが出て、あなた方のほうが査問にかけられて、職を失う可能性だってなくはない。……だが」

眼鏡の奥で不敵な笑みを浮かべながら、天竜の視線はくるみたちを飛び越えた。

「今日、これ以上ない確実な証拠が提出された。あとは被害に遭った生徒の診断書も必要だ。それさえあれば、嘆願を聞き入れることができる。……しかし、今まで発覚しなかったのが不思議だ。誰かが報告を怠っていたのかな?困るっけねえ、そういうのは。この学校の信用に関わる。……多分この場にいると思うから言っておくけれど、生徒を泣かせたり、苦しめて取ったメダルやトロフィーに価値はないよ。そんな時代は、もうとっくに終わったんだ」

彼は机に両手をつくと、話を続けた。

「保護者への説明会の日取りを、今日中に決めよう。当該の職員についての処分は今夜理事会を開いて決定する。余罪も出てきそうだから、知ってることがあったら私にも共有してほしい。それから、少ししんどい仕事になると思うけれど、今からなる早で、誰かさっきの音声を書き起こしてくれるかな?理事会と説明会で配りたいからね」

「私がやります」

紘輝の後ろに立っていた安倍が手を上げた。

「ありがとう、安倍君。忙しいのに悪いっけね。……さあ、軽音楽部のことに話を戻そう」

今度はくるみたちが再び緊張する番だった。

「個人的に君たちの気概は大いに買ってるし、言いたいことも筋が通っている。……しかしだ、放送室をジャックしてみんなを驚かせたことと、無許可で鍵を借りて機材を使ったこと、これについては、処分を与えなきゃならない」

『うああ……もしかして停学かな……』

くるみは天竜の次の言葉を、固唾を飲んで待ち構える。


「君たち全員、夏休み前に原稿用紙半分以上の反省文を提出しなさい。で、興津君はそれをまとめて、私のところまで持ってきてくれるかしん?」


想像以上に軽い処分に、くるみたちは思わず顔を見合わせた。

「……わかりました、可及的速やかにお渡しします」

明らかに拍子抜けした様子の興津の声が背中から聞こえて、くるみは思わず振り返る。

目を合わせた彼は、少し困ったように、しかしそれ以上に安心した笑みを浮かべている。

『よかった、先生が何も言われなくて……』

くるみは胸をなでおろすと、再び前を向いた。


天竜はくるみたちを見渡して続けた。

「吹奏楽部の方には、私が直接行って説明しよう。勇気を出して告発してくれた子が、非難されたりするこんがないようにしなければね。新しい顧問の先生は今日中に決めさせてもらう。……あと何か、言い忘れたことはあったかな?なければこれで解散にしようか。みんなお疲れ様。君たちも六時限目からはちゃんと授業に出なさい」

終始笑顔を崩さないままの天竜に見送られ、くるみたちは理事長室を後にした。


既に五時限目の授業が始まって、静まり返った西棟を歩く靴音だけが廊下に響く。

『先生、まだ中に残ってたけど、きっと太陽先輩の話を、理事長先生にしてるんだろうな。誤解、解けるかな……』

そう思ってくるみが理事長室を振り向いたとき、小さく腹が鳴った。

「……お昼、食べ損ねたなあ……」

教室のロッカーにしまったままの弁当の存在を思い出してぽつりとこぼすと、そこにいた全員の食欲のスイッチが入ってしまった。

「うおお、ヤバい、意識が全部計画に行ってたから、言われたらすげー腹減ってきた……」

「購買、もう閉まってますよね……」

「あかん。俺、手え震えてきたっけ」

「……なにか、甘いものでも飲んでごまかしましょうよ」

「余計に腹空きそうだなぁ」

くるみたちは互いに顔を見合わせ、誰ともなく笑いだす。


『どうか、これ以上誰も嫌な思いをしないで、音楽を楽しめますように』

自動販売機の前で仲間と一緒にジュースを飲みながら、くるみは心密かに祈った。

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