第4話異世界フォルダの謎

学校から帰宅したクルスは、早速スマホを手に取った。リアとの通話が現実だったのか、それとも自分の勘違いか――確かめるべく、もう一度ホーム画面を開く。


そこには、あの奇妙なフォルダがあった。まるで証拠のように、彼のスマホの画面に鎮座している。見たこともないルーン文字がアイコンに刻まれているそのフォルダは、ただのファイル収納とは思えなかった。


「……なんだよ、これ」


彼はタップしてみるが、表示されたのは昨日と同じ、見たこともない文字のパスワード入力画面だった。クルスは何度か手探りでパスワードを試してみたが、どれも不正解。


「やっぱり、簡単には開かないか」


机にスマホを置きながら、クルスはため息をついた。フォルダの存在は確かに目の前にある。しかし、その中身にアクセスする術がわからないままでは、リアが現実に存在しているのかどうかも確かめられない。あの切迫した声、助けを求める彼女の姿が頭をよぎり、クルスは一瞬、居ても立っても居られない気持ちに駆られた。


「……パスワードって言っても、これじゃあ何を入れればいいのかすらわからないしな」


ふと、彼は思い立ってブラウザを開き、「ルーン文字 パスワード」「エルフ 古代言語」などで検索してみた。だが、当然ながらそれらしい情報は見つからず、どこから手をつければいいのかも皆目見当がつかない。


「やっぱり、異世界のことは現実には存在しないのか……?」


少しだけ、夢だったのかもしれないという思いが頭をよぎる。けれども、あのリアルな通話や、彼女の助けを求める切実な声が現実だったように思えてならない。もし、あれがただの空想なら、なぜこのフォルダがスマホに現れたのかという疑問が残る。


クルスは何度もため息をつき、頭を掻きながら考え込んだ。しかしその時、スマホが再び振動し、画面に見慣れないルーン文字の通知が表示された。


「また……リアからか?」


驚きと戸惑いの中、クルスは電話に出た。


「クルス……聞こえる?」


「リア……また魔物に襲われてるのか?」


リアの声には切迫感があったが、彼女は今、どうにか戦況をしのいでいるようだった。クルスは急いで彼女に指示を出し、またいくつか助けを試みたものの、今度の相手は前回よりも手強い魔物だった。リアは戦闘の最中、ふと「ルーン文字」についてクルスに伝えてきた。


「ルーン文字の事はわからないけどこの世界に伝わる古代言語だと思う……特に『共鳴』の力が、力の封印や解放と深く関係しているわ」


「共鳴……?それってどういう意味?」


「私たちエルフは、心が通じ合った相手と強く共鳴すると、力を共有したり封印を解いたりすることができる。おそらく、君の持っているふぉるだというのも、それに関係しているのかもしれない」


クルスはその言葉を聞き、「共鳴」というキーワードがもしかしたらフォルダのパスワード解除に関係しているかもしれないと考え始めた。彼はその言葉について思い巡らせた。


「……もしかして、リアの名前をパスワードとして入力すれば開くのか?」


意を決して、クルスはパスワード入力画面に「リアンナ・サリアスフィン」と入力してみた。すると、画面が青白く光り、少しずつルーン文字が消えていく。そしてついに、封印が解かれ、フォルダが静かに開かれた。


「本当に……開いた」


クルスは驚きと興奮を抑えきれずに画面を見つめた。フォルダの中には見たこともないアイコンが並んでおり、『異世界仕様のブラウザ』と『魔法翻訳アプリ』が表示されているようだった。クルスは手にした異世界の情報が一目でわかるアプリに心を踊らせ、リアをもっと支援する方法が見つかったかもしれないという期待で胸が高鳴った。


「……これを使えば、リアをもっと助けられるかも」


彼はフォルダを見つめながら手を握りしめた。異世界と自分をつなぐ架け橋を手にしたその瞬間、クルスはリアとの絆を感じ、彼女を助ける使命感に心が熱くなっていった。


「リア待っていろ今助けてやるからな!」

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