第13話「第三の試練:信頼を試される場」
広間の中央で執事が再び壇上に立ち、声を張り上げた。
「第三の試練を発表いたします。今回の試練は『協力と信頼』をテーマにしたものです。皆様にはグループを組んでいただき、与えられた課題を協力して解決していただきます」
その発表に会場がざわつき始めた。これまでの試練は個人戦だったが、今度は他者との連携が試されるという。
「グループはランダムで決定されます。試練の詳細な内容は後ほどお伝えしますが、ここで重要なのは、他者との連携をどのように築き、信頼関係を活用して課題を解決するかです。それでは、グループの発表を行います」
執事が次々とグループの構成を発表していく。俺は少し緊張しながら、自分の名前が呼ばれるのを待った。
グループの発表
「亮様、イザベラ・フォン・ライヒェン様、ラウル・バイン様、そしてマルコ・ディーネス様。この4名で一つのグループとなります」
名前を呼ばれた瞬間、俺は思わず隣に座っていたアリアに目を向けた。彼女は優しく頷きながら、励ますように口元を緩めた。
「イザベラか…。少し緊張するな」
イザベラは冷静で実力もあるが、少し高圧的な性格だ。一方で、ラウルとマルコの二人はこれまでの試練でも健闘しており、それぞれ独自の強みを持っている。この組み合わせでどれほどの連携が取れるかが鍵になる。
試練の内容:迷宮脱出
執事が再び説明を始めた。
「第三の試練は『迷宮脱出』です。皆様には、協力して迷宮の出口を見つけていただきます。この迷宮にはさまざまな仕掛けや障害が設けられています。個々の能力だけで突破することは難しく、グループ全員の協力が必要です」
迷宮脱出──この広間の地下には、こうした試練のための施設が作られていると聞いたことがある。広い空間に複雑な通路が作られ、参加者たちが試される場となっているらしい。
「制限時間は2時間。すべてのグループが同時に開始し、迷宮を脱出した順に評価されます。ただし、全員が出口に揃わなければ失格となります。チーム全員で脱出することが、試練の重要なポイントです」
執事の説明を聞きながら、俺はチームメンバーの方を見た。イザベラは余裕たっぷりの笑みを浮かべており、ラウルとマルコは少し緊張した表情で控えめに頷いている。
試練開始
試練が始まり、俺たちは迷宮の入り口に立っていた。目の前には暗く曲がりくねった通路が続いており、その奥には何が待ち受けているかわからない。
「さて、どう進むかしら?」
イザベラが静かに口を開いた。その声には少しの余裕と、全体を見渡すような冷静さが感じられる。
「まずは慎重に進もう。無闇に奥へ進むと仕掛けに引っかかるかもしれない」
俺がそう提案すると、ラウルがすぐに頷いた。
「同意だ。俺が前を進むよ。体力には自信があるし、仕掛けがあれば対応できるはずだ」
「では、私が後ろから支えるわ」
イザベラは冷静に応じながら、マルコを見て続けた。
「マルコ、あなたはどうする?」
「俺は…ラウルのすぐ後ろにつく。二人で前方を警戒するのがいいだろう」
彼の答えに皆が頷き、俺たちはその配置で迷宮の奥へと足を踏み入れた。
迷宮の最初の仕掛け
数分歩いたところで、通路が三つに分かれる場所にたどり着いた。それぞれの道には簡単な標識があるが、それがどのような意味を持つのかはわからない。
「どれを選ぶべきかしら?」
イザベラが道を見つめながら言った。俺はしばらく標識を観察し、そこに刻まれた模様が何かのヒントになっているのではないかと考えた。
「この模様、風向きを示しているように見える。迷宮内の空気の流れを考えれば、出口に通じる道がわかるかもしれない」
俺がそう言うと、ラウルが標識に触れながら頷いた。
「なるほど。確かに風が微かにこの道から流れてきている気がする。進んでみよう」
俺たちは慎重にその道を選び、先へ進んだ。すると、突然壁から矢が飛び出してきた。
「伏せろ!」
ラウルの叫び声で全員が身を伏せる。その矢は俺たちの頭上をかすめて飛び去り、壁に突き刺さった。
「気をつけて。これが迷宮の仕掛けというわけね」
イザベラが冷静に言いながら立ち上がり、周囲を見渡す。俺たちはさらに警戒を強めながら奥へ進んだ。
チームの絆
次の部屋にたどり着いたとき、巨大な石の球が通路を塞いでいた。その球にはいくつかの穴が開いており、そこに何かをはめ込む仕掛けになっているようだった。
「これは…力任せに動かせるものじゃないな」
俺が呟くと、イザベラが石球をじっくりと観察した。
「何かを探してこの穴にはめるのが正解でしょうね。でも、どこにその鍵があるのかしら」
「俺が探す。腕力は自信があるし、少しくらいの罠なら耐えられる」
マルコが名乗りを上げ、石球の周囲を調べ始めた。一方でラウルも反対側を警戒している。
「亮君、あなたは私と一緒に手がかりを探しましょう」
イザベラに促され、俺たちは周囲の壁や床を調べることにした。
次回に続く
第14話では、第三の試練が始まり、チームメンバーと共に迷宮を進む様子を描きました。次回では、迷宮の仕掛けに挑み、試練がさらに深まっていく展開を描きます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます