異世界転生したら俺の嫁が悪役令嬢だった件

第12話「剣戟の果て、次なる試練へ」

戦いのクライマックス

広間に緊張が張り詰める。カイルの木剣が再び鋭い音を立てながら振り下ろされる。俺は咄嗟に体をひねり、かろうじてその一撃を避けた。だが、彼の動きは止まらない。流れるように剣を振り回し、俺の隙を突こうと迫ってくる。

「もう限界か？」

カイルが冷静な声で問いかけてくる。彼の目には勝利への確信が浮かんでいた。確かに、俺の体力は限界に近い。腕が震え、木剣を握る手の感覚が鈍くなっている。

だが、ここで諦めるわけにはいかない。これまで観察してきたカイルの動きから、彼の剣筋には一定のリズムがあることを掴んでいた。そのリズムが次の隙を生むはずだ。

カイルが再び剣を振り上げる。その瞬間、俺は木剣を振り払うように構え直し、正面から彼の剣を受け止めた。

ガンッ！

剣と剣がぶつかり合う音が広間に響き渡る。衝撃で足元が揺らぐが、俺は踏みとどまる。そして、反動を利用して木剣を斜めに振り上げた。

「…！」

カイルが初めて驚いた表情を見せた。俺の剣先が彼の肩口にわずかに触れる。直撃ではなかったものの、その一撃は確かに彼の動きを止めた。

試合の決着

「そこまで！」

執事の声が響き渡り、試合の終了を告げる。その瞬間、広間が静寂に包まれた。

俺は肩で息をしながら木剣を下ろし、カイルに向かって一礼した。彼は短く息を整えながら、穏やかな表情でこちらを見つめている。

「やるじゃないか、亮君」

その言葉には、本心からの驚きと少しの感心が混じっていた。彼が木剣を下ろし、一歩近づいてきた。

「正直、ここまで粘られるとは思っていなかった。君の動きには可能性を感じるよ」

「ありがとう」

俺も短く答え、軽く微笑む。勝者がどちらなのかはまだわからないが、この試合で全力を尽くしたという自負がある。

審査員たちが熱心に議論を始める中、観客たちはざわつきながら感想を交わしていた。その中には、俺を応援する声も混じっている。

試合結果

数分後、執事が壇上に立ち、結果を発表する。

「第二の試練の結果を発表します。亮様対カイル・ヴェインブルク様の試合は、…カイル・ヴェインブルク様の勝利と判定されました！」

その瞬間、観客たちから拍手が沸き起こる。俺は悔しさを飲み込みながら、カイルに向かって再び礼をした。彼も軽く頷き、口元に柔らかな笑みを浮かべている。

「勝敗はどうあれ、君の戦いは見事だったよ」

「ありがとう。君の強さも圧倒的だった」

勝負に負けたものの、俺はこれまでにない達成感を感じていた。そして、次の試練で巻き返すチャンスがあることを心に誓う。

試合後の休憩

第二の試練が終わり、次の試練までの短い休憩時間が設けられた。俺は控室に戻り、水を飲みながら疲れた体をほぐす。木剣を振り続けた腕がまだ震えている。

そこにアリアが駆け寄ってきた。

「亮君、本当に素晴らしかったわ！あのカイル相手にここまでやるなんて…私、感動した！」

彼女の瞳には輝きが宿っている。その言葉に救われる思いがしたが、同時に責任の重さも感じた。

「ありがとう。でも、まだこれで終わりじゃない。次の試練で取り返さないとね」

「ええ、でも無理だけはしないでね。あなたが頑張っているのは十分に伝わっているから」

アリアの声には優しさが溢れていた。俺は彼女に笑顔を返し、次の試練に向けて気持ちを切り替えた。

会場のざわめき

休憩中も、会場では試練についての話題で盛り上がっていた。カイルの実力の凄さや、俺の奮闘ぶりについて感想を語り合う貴族たちの声が聞こえる。

「亮殿は思ったよりも健闘していたな」

「ええ、剣術に慣れていないと聞いていたが、見事な動きだった」

その声を聞きながら、俺は次の試練の内容について思いを巡らせた。この短い休憩の間にできるだけ回復し、準備を整える必要がある。

第三の試練の発表

休憩が終わると、執事が再び壇上に立ち、次の試練について説明を始めた。

「第三の試練では、皆様の忠誠心と信頼関係を試させていただきます。この試練は個人戦ではなく、複数人による協力形式で行われます。詳細は後ほどお伝えしますが、この試練では、他者との連携が重要な鍵となるでしょう」

協力形式──これまでとはまったく異なる試練だ。その内容に会場もざわつき始める。俺はふとアリアの方を見た。彼女は静かに頷き、何かを伝えようとしているようだった。

「亮君、あなたなら大丈夫よ。どんな試練でもきっと乗り越えられるわ」

彼女の言葉を胸に刻みながら、俺は第三の試練に向けて気持ちを引き締めた。

次回に続く