第11話「カイルとの激突」

「防御ばかりでは勝てないよ」


カイルの言葉が冷静さを失いかけた俺の耳に届く。彼は木剣を軽々と振り回しながら、さらなる攻撃の準備をしているようだった。攻撃の手数、力強さ、スピード──どれを取っても、これまでの対戦相手とは次元が違う。


俺はひたすら防御に徹していたが、その度に木剣を握る手が震え、腕に衝撃が伝わる。だが、防御の合間にカイルの動きを観察するうち、あることに気づいた。


彼は確かに強いが、その攻撃は完璧ではない。剣を振り下ろした直後、あるいは体をひねる瞬間にわずかだが隙がある。その隙を突ければ反撃の糸口が見えるかもしれない。


攻守の切り替え


カイルが再び木剣を振り下ろしてくる。その一撃は俺の肩口を狙っていたが、わずかにタイミングを外して後退することで、ギリギリのところでかわす。


「ほう、少しは動けるじゃないか」


カイルの目がわずかに鋭さを増す。彼の動きが速くなり、剣筋がさらに予測しづらいものになっていく。それでも俺は冷静に構え、攻撃を見極める。


次の攻撃のタイミングで、俺は彼の剣を受け止める代わりに、木剣を横に振り払うことで相手の剣を跳ね返した。その瞬間、わずかな間合いを取り戻すことに成功した。


「いい反応だ。だが、そんな小細工で俺を倒せると思っているのか?」


カイルの言葉には余裕が滲んでいる。彼が再び攻撃態勢に入る前に、俺は思い切って一歩踏み込んだ。攻める姿勢を見せることで、相手のペースを崩す狙いだ。


反撃の一撃


俺が木剣を斜めに振り上げた瞬間、カイルが防御に回る。その動きは速いが、初めて攻められたことに対する戸惑いが一瞬見えた。


木剣同士がぶつかり合い、金属のような鈍い音が広間に響く。俺の剣は彼の防御を突破するには至らなかったが、その勢いでカイルの体勢が少し崩れる。


観客たちが息を呑む中、俺はさらに一撃を加えようとするが、カイルが体をひねり、剣を振り払って間合いを取り戻した。その動作は洗練されており、俺の攻撃を受け流すには十分だった。


「面白い。君がここまで動けるとは思わなかった」


カイルの目が一層鋭くなり、攻撃にさらなる力が込められるのがわかる。彼は木剣を低く構え、次の一撃に備えている。その姿勢はまるで獲物を狙う猛獣のようだった。


戦いの緊迫感


「これで終わりにしようか」


カイルが低い声で言うと同時に、木剣が鋭い音を立てて振り下ろされる。そのスピードと力強さに、俺は咄嗟に剣を横に構えた。剣がぶつかる衝撃で体が揺れるが、なんとか耐え抜く。


彼の剣筋は相変わらず正確で、その一撃一撃が体力を削る。だが、攻撃に集中している彼の動きには、少しだけ焦りが見え始めている。おそらく、想像以上に俺が粘っていることに驚いているのだろう。


「勝てるかもしれない…」


その希望が胸をよぎった瞬間、俺はさらに集中力を高めた。カイルが再び剣を振り下ろす瞬間、俺は体を低くして避け、そのまま木剣を突き出す。


会場の空気が変わる


俺の剣先がカイルの胴体にわずかに触れる。それは直撃ではなかったが、彼の動きを一瞬止めるには十分だった。


観客たちの視線が俺に集まり、ざわめきが広間を包む。だが、カイルはすぐに笑みを浮かべ、体勢を立て直した。


「なるほど。少し本気を出さなければならないようだね」


その言葉と共に、カイルの動きがさらに鋭さを増す。剣筋は予測が難しくなり、間合いを詰める速さも一段と増していた。


次への備え


俺は息を整えながら木剣を構え直す。カイルの強さは圧倒的だが、俺が守りに徹し続けたことで、彼の攻撃にわずかな乱れが生じている。それを利用して反撃の糸口を見つけなければならない。


次の攻撃が来る。その瞬間に賭けるしかない。観客たちの期待と緊張が広間を包む中、俺は最後の一撃に向けて気持ちを集中させた。


2人の戦いは最終局面を迎える

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