第2話 【固有スキル奴隷商人】
気づけば見覚えのない部屋にいた
天井や床、壁も真っ白の部屋の中、見知らぬ大人の女性とテーブル越しに向き合っている
美人の女性が口を開いた
「越後谷学さん、あなたは死にました」
衝撃的な言葉に面食らいつつも、俺は女性の正体に気づいた
よく見たら女性の背中から白鳥のような翼が生えている。どう見ても人間じゃない
つまりこれは――
「――異世界転生ですよね! 女神様‼ えーと、俺が欲しいチートは――」
「違います! よく簡単に死を受け入れて、チートとか言えますね。切り替え早すぎでしょ⁉ 私は女神じゃなく、神に使える天使デスエルです」
なんか死を司っていそうで恐い
「越後谷さん、あなたは居眠りドライバーのトラックにひかれて死にましたが、あの世に行くのではなく、我が主が開催する異世界デスゲームに参加してもらいます」
「デスゲーム⁉ 最後の1人になるまで殺し合うやつですか?」
「いえ、そうじゃなくて、DFO。ドラゴン・ファンタジー・オンラインみたいなやつです」
DFOは世界初のVRMMORPGがデスゲームと化して、主人公たちがダンジョン攻略に挑み、ラストボスの撃破を目指す話だ
「我が主はある時、DFOにはまりました。そしてこう思いました『デスゲームを造りたい』」
神の考えることはよく分からん
「主はデスゲーム用の新世界を創造し、MMORPGのようなシステムや私のようなGMの天使も創りました。でもこう思いました『ただのパクリは嫌だな。そうだオリジナリティを足そう。ダンジョンを攻略するPvEだけじゃなくて、PvP要素も足そう。プレイヤーは死者の魂を持ってきて、戦わせるか! 色んな世界から他の神にお願いして魂を借りてこよう! 勝者には神の祝福をプレゼントだ』」
「俺が選ばれた理由は?」
「運が良かっただけです。そういうわけで、このデスゲームのプレイヤーは様々な世界から選ばれた死者1万人です。しかし勝者は最大100人です」
「全体の1%ですか」
デスエルさんは神妙な顔で頷いた
「勝者には生き返りの権利と、どんな願いでも一つ叶う権利が付与されます」
「ゲームで死亡した敗者は?」
「元々行く予定だったあの世に送られます」
17年の短い人生を歩んできたが、俺は胸を張って天国に行ける自信はなかった。だったら目指す目標は一つだ!
「デスエルさん! 俺、頑張ってデスゲームのクリアを目指します!」
「越後谷さんのやる気は喜ばしいのですが、クリアはなかなか難しいと思います。ほとんどのプレイヤーは元居た世界で何らかの戦闘能力を持っていた人です。例えば越後谷さんの地球に近い世界だと魔法少女や異能力者の参加者がいます。ファンタジーな世界だと、魔法使いやエルフ。SF的な世界だと、サイボーグやミュータントですね。おまけに元々持っていた能力や装備は、制限はあるもののデスゲーム内に持ち込み可です」
「は? そんな奴ら、チートじゃないですか⁉」
「神の試練なのでクレームは受け付けません。そして、このデスゲームでのステータスは【レベル】と【HP】と【MP】と【戦闘レート】だけです。強さを示す戦闘レートの初期値は1から50です」
「俺はいくつですか?」
「2です」
「ブービー賞ですね」
「正直に言って越後谷さんがこのデスゲームをクリアするのは難しいと思います。でも、まだ逆転の可能性【固有スキル】があります」
何ていい響きの言葉だ。チートの香りがする
「固有スキルの選び方は二つあります。一つは自分の能力や才能に合わせた固有スキルを考える方法です。元々魔法が使えるならそれを固有スキルにする感じです。しかし越後谷さんには、これは向いてません。もう一つは、ガチャです。強力なスキルからそうでもないものまでごちゃまぜですが、一発逆転を狙うならこれです。ガチャ引きますか?」
デスゲームで運試しは恐いが、他に道はないように思える
「はい、引きます!」
「分かりました、どうぞ!」
俺の目の前にゲームのウインドウが現れて画面内でスロットマシンが高速で回転する。【PUSH!】とボタン表示されていた
俺は無心でボタンを押した
スロットが止まる
固有スキル奴隷商人をGET‼
その言葉を見た俺はガッツポーズした
「これ、当たりスキルですよね! 他のプレイヤーを奴隷にするとか最強クラスの能力でしょ」
「あー、確かに【奴隷商人】スキルは、他のプレイヤーを奴隷にして何でも命令出来るんですけど、条件があります。詳細を出します」
【奴隷商人1】
他のプレイヤーから同意を得て、自らの奴隷に出来る。このスキルの所有者と奴隷は【精神操作系スキル】の効果と【分析系スキル】の効果は受けない。奴隷の最大人数は3人
「は? 他のプレイヤーの同意?」
「このスキルは誰かを強制的に奴隷にする効果はありません。同意が必要です。その代わり精神操作スキルで奴隷を奪われるNTR展開や分析スキルで奴隷商人の詳細がバレることはないという強みがあります。ちなみにスキルの数字はレベルで、最大10です。レベルアップすれば奴隷の最大人数も増えると思います」
「ど、同意が必要って、そんな馬鹿な! 誰が奴隷になることを同意するんですか⁉」
「それは越後谷さんが考えることです。最後にお伝えする情報ですが、このデスゲームでは様々なイベントが開催予定で、最初のイベントはチュートリアルです。ゲーム開始7日間は、プレイヤー間でダメージを与えることは不可能で、敵対的なスキルの効果は無効化されます」
「敵対的なスキル?」
「回復や支援効果のスキルは使えますが、相手に害を与えるスキルは使っても無効化されます。」
「俺の奴隷商人スキルは?」
「ある意味運が良かったですね。奴隷商人スキルにプレイヤーに対する強制力はないので敵対的なスキルには当たらないようです。それじゃあグッドラック!」
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