第3話 【ネームドモンスター】
デスエルさんと別れ、デスゲームが始まってから、もう4日目だ。生き残りを懸けた審判の日まで残り3日しかない
俺の置かれている状況を確認する
必死にモンスターを倒しレベルは1から7まで上がり、戦闘レートは6上がった
【装備】は、【武器】、【防具】、【アクセサリー】の3種類あり、それぞれ2個ずつ装備出来るシステムだったので、なんとか最低限の装備を6個揃えた。戦闘レートは合計6上がった
つまり俺の戦闘レートは初期値2+レベル分6+装備分6で14だった
これは他のプレイヤーと比べてもかなり低かった。街中ですれ違うプレイヤーを見ると30は超えている
彼らに勇気を出して話しかけても俺の戦闘レートを見た瞬間、無視される
たまに話を聞いてくれる人もいたが、パーティを組むなら固有スキルの開示が条件だと言われ、返事が出来なかった
奴隷商人がバレたらチュートリアルが終わったらすぐに殺されそうだ。デスゲームで他者の自由を奪うスキルは危険視されるだろう
結局、俺はソロで攻略をしていた
全体マップを確認するとこの世界は一つの大陸であり、大きな街が9個点在している。俺は北東にある森林エリアの【アレンバルツ】という街が初期地点だった。1万人のプレイヤーは9つの街にランダムに振り分けられているらしい
アレンバルツの周辺にはダンジョンが二つあった
【実りの森】は、キノコや果物などの食べ物アイテムが豊富なダンジョン
【迷いの森】は、常時霧がかかっていて歩いた場所の自動マッピングが無効化される非常に迷いやすい危険なダンジョンだった
もちろん俺は迷いの森を攻略中だ
俺も最初は実りの森に行ったが、稼ぎのライバルとなるプレイヤーが多く、モンスターの横取りも多かった。一応、複数人でモンスターを倒した場合、戦闘貢献度に応じて報酬は分配されるシステムだったが、横殴りされた場合、報酬は雀の涙にしかならない
その点迷いの森は、プレイヤーが少なく、時間をかければ俺もモンスターを倒せる
今も絶賛戦闘中だ
「タケタケ!」
妙な鳴き声を上げて俺に近づいてくるのは人型サイズのお化けキノコである【キノコマン】だ。傘が赤いキノコが巨大化して手と足が生え、つぶらな瞳をうるうるさせるゆるキャラみたいなモンスターだ
俺は両手で操る槍で思いっきりキノコマンの体を突く。一度じゃ倒せないので距離を取りながら何度も突く
「タケー!」
キノコマンは断末魔の叫びを上げ、光の粒となって虚空に消えた。戦闘報酬ウインドウが開いて経験値と120円の入手を俺に知らせる
「よし! あっ、まだいたか」
一息つく間もなく次の怪物が現れる。キノコマンは実りの森では見かけなかった迷いの森専用っぽい雑魚モンスターだが、亜種が存在する。こいつらが、かなりやっかいだった
「ドクタケ!」
「シビタケ!」
見た目はほぼキノコマンと同じだが、傘の色が紫の【ドクキノコマン】と黄色い傘の【シビレキノコマン】だ。戦闘レートは通常種より高く、個体差もあるが、今回は15と16で俺よりも高い
しかも、こいつらは状態異常攻撃を持つ。キノコたちの傘から紫と黄色の胞子の団子のようなものが、それぞれ放たれる
紫の団子はよけたが、黄色の胞子の塊に当たってしまった
「うっ!」
視界の左上に写る【HPバー】が1割ほど削れ、さらにその上に【麻痺1】と表示される
全身に痺れが走る
動けなくなるほどじゃないが、同種の状態異常攻撃を何度も食らうと麻痺2、麻痺3と数字が進行していくらしい。おそらく最後は体が完全に麻痺して動けなくなるだろう
「エリクサー使用」
俺は回復アイテムを口頭で使用して、HPと状態異常を回復すると、脱兎のごとく逃げ出した。キノコマンたちはどこまでもプレイヤーを追って来るアクティブタイプのモンスターだ。視界から完全に消えないと撒けなかった
俺は巨大な太い木が生えている開けた広場のような場所にたどり着いた
初めて来た場所だが帰り道の心配はしていない。実は迷いの森の攻略法を俺は2日目に発見していた
迷いの森はマップの詳細が表示されないが、マップに目印のピンを打つことは出来る。現在地のカーソルは表示されているので、出入り口に打っておいたピンに向かって歩いて行けばいつかは外に出られるわけだ
マップ操作で広場の位置にもピンを打っていると、何かの音が聞こえた
かすかに生き物のうなり声のような音が聞こえる
周囲に聴き耳を立てる
巨木の方から聞こえたので裏側に回ると、大きなうろがあった
俺は恐る恐るうろの中に入る
中は真っ暗だったが、すぐ音の正体に気づいた
いびきだ。そして暗闇の中、名前、戦闘レート、HPバーが見えた
【血染めの大熊ブラッドベア 戦闘レート60】
こ、こいつは【ネームドモンスター】だ!
確か名ありのモンスターはボスを除けば最強クラスの強さを誇り、倒したら報酬もたんまりもらえると街のNPCが言っていた
(でもレート60なんてまともに戦えるわけがない、死ぬ)
幸いなことにブラッドベアは起きる気配はなかったので、俺はその場から逃げ出し、迷いの森を脱出した
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