第4話

「超能力?」

「うん。触れずに相手を殴れたり、透視できたり、透明人間になれたり、千里眼使えたり……」

「だめだ」

「え? なんで」

「お前はその力を使って今までいじめてきた奴らに復讐しようとしているだろう」

「そうだけど。死神のくせに復讐しても何の意味もない。残るのはむなしさだけだ、とかいいだすの?」

「いや、違う。体との取引に超能力は安すぎるということだ」

 晃は意外なことを言う死神に「へえ」と口から声が洩れた。

「体は偉大なものだ。自由自在に操れる。ただ体は時間の経過によって力が衰えていく。希少性の高いものなんだ」

「じゃあ何をくれるんだよ」

 キショウセイの意味が分からなかったが、晃はより気になることだけを死神に訊ねた。幹から太い笑い声が響いてくる。

「”力”そのものだ」

「力?」

「そうだ、超能力だけではない。単純な力だ。まあ俺が晃の中に入って俺の使える力を全て使えるようにするということだ」

 晃はいつのまにか早く死神に入ってほしくなっていた。

「もう何でもいいよ。早く僕の体に入りなよ」

「わかった」

 木から水を吸い込むような轟音が聞こえてくる。祭りで行きかう人には聞こえていないようだった。背中に風が吹いたと思ったら体内が熱を持って動き出したような気分だった。いつのまにかしめ縄はほどけ、体は解放されていた。

『晃、聞こえるか』

 どこからか死神の声がする。

『別に声は出さなくてもいい。お前の中に入った。お前が心の中に浮かんだ内容で会話できる』

(それはときおり面倒だろうな。ところで僕の体を使って何をするの?)

『死神の本職はやはり人の命を吸い取ることだ。晃、お前の体に入れてくれたお礼に誰の命を吸い取ってほしいか、教えてくれ。その通りにしよう』

 晃は頭の中ですぐに小西、笹本、平山の顔が思い浮かんだ。

『なるほどな。了解した』

 急に視界が鮮やかな色に変色した。よく見ると人と思われる者は赤い色になっている。

『これはまあ標的の人間を探し当てる視界だな。標的の人間は鈍色で着色される』

(にびいろ?)

『灰色に近い色だ』

(だったら灰色でいいのに)

『俺は鈍色という名前が好きなんだ。とにかく小西たちが歩いていった方に向かってみるぞ』

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