第26話最深部への道とサラの弱音

洞窟の奥へ進む


巨人との死闘を終えた俺たちは、傷つきながらも洞窟の最深部を目指して歩き続けていた。熱気は相変わらず全身を包み込み、岩壁から滴る溶岩が赤い光を反射している。


「……なんか、巨人を倒したけど、さらに空気が重くなった気がする」


リーナが怯えた声を漏らす。その言葉に俺も同感だった。奥へ進むほどに、圧迫感が強まり、視界も熱気で歪んでいる。


「ここからが本番かもしれないわね。全員、気を抜かないで」


アリサが鋭い目つきで前方を見据え、俺たちは一歩ずつ慎重に進んだ。


サラの異変


しばらく歩いていると、後ろを歩いていたサラが突然足を止め、肩を押さえながら息を切らした。


「……なんか、肩が……熱い」


「サラ、大丈夫か?」


俺が振り返って声をかけると、彼女の表情は苦痛で歪んでいた。肩を覆う装備を外してみると、巨人の攻撃で負った火傷が悪化して赤く腫れ上がっていた。


「これ……思ったよりひどいね。すぐに手当てしないと……!」


リーナが慌てて回復魔法を唱えるが、火傷のダメージが深く、完全には癒えない。


「ダメだ、ここで休もう。サラがこれ以上無理をしたら危険だ」


俺がそう提案すると、アリサも頷いた。


「そうね。少しでも体力を回復させないと、この先を進むのは無理だわ」


休息の中での弱音


洞窟の壁に寄りかかり、俺たちはしばらくの間休息を取ることにした。サラは肩を抑えながら、悔しそうに唇を噛んでいる。


「……情けないわね。私がこんなところで足を引っ張るなんて」


普段強気なサラがそんな言葉を口にするのは珍しく、俺たちは一瞬驚いた。だが、それ以上に彼女が自分を責めていることが痛いほど伝わってくる。


「こんな状態で進むなんて、私には無理かもしれない……」


彼女の声はかすかに震えていた。その言葉を聞いて、俺はそっと彼女の隣に座り、肩越しに声をかけた。


「サラ、そんなことないよ。俺たちはみんなでここまで来たんだ。サラがいなかったら、あの巨人を倒すことだってできなかった」


「でも……今の私は何もできてない。足を引っ張るだけで……」


「そんなこと、誰も思ってない。これまで何度も助けられてきたのに、今さら弱音を吐くのはサラらしくないよ」


俺が優しく言うと、彼女はしばらく黙ったままだった。しかし、その肩がかすかに震えているのがわかった。


素直な感謝


「……ありがとう」


サラが小さな声で呟いた。普段は強がりばかりの彼女が、こんなに素直に感謝を伝えるのは初めてかもしれない。


「私……レイにそんなこと言われるとは思わなかったわ」


彼女は顔を赤らめながらも、少しだけ笑顔を浮かべていた。その表情を見て、俺は安心したように微笑んだ。


「サラだってたまには弱音を吐いていいんだよ。でも、その分、俺たちが支えるからさ」


「……ふん、あんたがそんなこと言うと調子狂うわね。でも……ありがとう、本当に」


サラの言葉に、俺たち全員が少しだけ笑い声を漏らした。


休息後の決意


回復魔法としばしの休息で、サラの顔に少し元気が戻ってきた。肩の火傷は完全には治らないが、これ以上悪化することはなさそうだ。


「さぁ、そろそろ行きましょう。最深部までもう少しよ」


アリサが声をかけ、俺たちは再び立ち上がった。サラも立ち上がり、大剣を軽く振りながら言う。


「次は私が前に出るわ。後ろを歩くのは性に合わないしね」


その言葉に、俺たちは自然と笑みを浮かべた。


最深部の扉


進んだ先には、巨大な扉が姿を現した。それは黒い金属でできており、表面には炎の模様が刻まれている。


「……これが最深部の扉ね」


アリサがつぶやき、俺たちは全員でその巨大な扉を見上げた。圧倒的な存在感が、これまでの試練とは比べ物にならない危険を予感させる。


「ここを開けたら……きっと最後の試練が待ってる」


俺がそう言うと、リーナが頷きながら杖を握りしめた。


「でも、みんながいるなら、絶対に大丈夫だよね!」


「そうね。ここまで来たんだから、やり遂げるだけよ」


アリサの言葉に全員が頷き、俺たちは覚悟を決めた。


エンディング - 最終戦への幕開け


「開けるわよ」


アリサがゆっくりと扉に手をかける。その瞬間、扉の向こうから熱風が吹きつけ、目の前には赤く輝く光が溢れ出した。


「行くぞ……!」


俺たちは武器を構え、扉の向こうへと足を踏み入れた。その先には、灼熱の王と呼ばれる最強の敵が待ち受けている。


次回予告


第27話では、灼熱の王との最終決戦が描かれます。これまでにない強敵を前に、全員が全力で挑む死闘の行方にご期待ください!

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