第15話個人スキルの強化 - レイの課題

練習場の全貌


俺たちは練習場の広場に足を踏み入れ、その広さと設備の充実ぶりに圧倒された。広場にはさまざまな冒険者たちが汗を流しながら訓練をしており、それぞれの目的に合わせた練習ができるようになっている。


「思った以上に本格的な場所ね……」


アリサが周囲を観察しながら呟いた。広場の一角には、木製の訓練用ゴーレムが並び、冒険者たちがそれらと模擬戦を繰り広げている。他にも、遠距離攻撃のターゲット練習用の射的場や、魔法を使うための訓練スペースもある。


「すごい!これならどんな練習もできそうだね!」


リーナが目を輝かせながら駆け出す。彼女はすぐに魔法練習用のエリアを見つけ、興味津々にその仕組みを観察していた。


「……ふん、大したことなさそうじゃない」


サラが腕を組みながら呟くものの、その目は模擬戦エリアに釘付けだった。彼女も気になっているのだろう。


「それぞれ自分の課題を見つけて、重点的に練習するのがいいわね」


アリサが全員に提案し、俺たちはそれぞれの目的に合わせて動き出した。


模擬戦開始 - レイの苦戦


「じゃあ、レイ、まずはこの訓練用ゴーレムを相手にしてみなさい」


アリサに促され、俺は訓練用の剣を握りしめた。目の前に立つゴーレムは木製ながらも人型で、まるで生きているように動き出す。


「これを倒せばいいんだな?」


「ええ。攻撃と防御のバランスを意識して、まずは自分のペースを掴むことが大事よ」


俺はアリサのアドバイスを頭に入れながら、ゴーレムに向かって剣を振り下ろした。しかし、その一撃をゴーレムは軽々と回避し、逆に素早い反撃を仕掛けてくる。


「うわっ……!」


とっさに身をかわそうとするが、ゴーレムの腕が俺の肩に当たり、バランスを崩してしまう。


「ダメだ、動きが遅い!そんな調子じゃ本物の敵にやられるわよ!」


サラが厳しい声を飛ばしながら、俺の様子を見ている。その言葉が刺さり、俺は悔しさで拳を握りしめた。


「……もう一回だ!」


アリサのアドバイス


再びゴーレムに向き直った俺に、アリサが優しく声をかける。


「レイ、相手の動きをもっとよく見て。それに、剣を振る時は自分の体勢も意識すること」


「体勢……?」


「そうよ。ただ攻撃するだけじゃなく、次の動きにつなげることを考えなさい。攻撃が終わった後に隙が大きいと、反撃されるわ」


アリサのアドバイスを受けて、俺は自分の動きをもう一度見直すことにした。


「よし、やってみる!」


ゴーレムに向かって再び剣を振り、今度は攻撃の後に体勢を整えることを意識した。すると、ゴーレムの反撃をギリギリで回避できるようになり、次の攻撃につなげる余裕が生まれた。


「いい感じね。その調子よ!」


サラの厳しい指導


「……まだまだ甘いわ」


アリサが褒める中、サラが厳しい声を上げた。そして彼女は俺の隣に立ち、模擬戦用のゴーレムに向き直った。


「見てなさい。これが本当の動きよ」


サラは大剣を軽々と振り回し、ゴーレムの攻撃をすべて回避しながら、的確に弱点を狙った攻撃を繰り出す。その動きは力強さと精密さを兼ね備えており、俺には到底真似できないように思えた。


「どう?これくらいできるようにならなきゃ話にならないわよ」


「すごいけど……自分にはまだ無理かも」


俺がそう答えると、サラは大きなため息をつきながら俺の肩を叩いた。


「誰も最初から完璧なんて期待してないわ。でも、あんたはもっと真剣にやれるはず。甘えてるんじゃないわよ」


その言葉に、俺は胸が熱くなるのを感じた。サラの厳しさは俺を突き放すためではなく、本気で期待しているからこそなのだ。


「……わかった、もう一度やってみる」


小さな勝利とリーナの励まし


再びゴーレムと向き合い、今度はサラの動きを思い浮かべながら攻撃を繰り出す。剣を振るタイミングと体勢の整え方を意識し、ゴーレムの動きに合わせて攻撃を重ねた。


「これで……どうだ!」


最後の一撃を放つと、ゴーレムが大きな音を立てて倒れる。俺は剣を握りしめながら、ようやく倒せたことに安堵した。


「やったね、レイちゃん!」


リーナが駆け寄り、満面の笑みを浮かべて俺を褒めてくれる。その言葉に、俺は少し照れながらも嬉しさを感じた。


「まだまだだけど……少しは成長できたかな」


「うん!どんどん上手くなってるよ!」


リーナの明るい声に勇気づけられ、俺は次の練習にも全力で取り組む決意を固めた。


エンディング:さらなる課題へ


「まずはこれくらいでいいだろう。でも、次の練習ではもっと追い込むから覚悟しておきなさいよ」


サラがそう言い放ちながら立ち去り、アリサも満足げに微笑んでいる。


「今日の成果を明日につなげていきましょう」


彼女の言葉に頷きながら、俺は次の訓練に向けて気持ちを切り替えた。これからの修行が俺たちの未来を変える――そんな予感が胸の中に芽生えていた。


次回予告


第16話では、模擬戦を通じてチーム全体の連携を強化する訓練が描かれます。個々の成長が連携にどう活きるのか、さらなるチームワークの挑戦にご期待ください!

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