第11話帰路 - 遺跡から街への道中
遺跡からの脱出
「これで、本当に終わったのね……!」
リーナが胸を押さえて深く息をつく。遺跡最奥の守護者、星影のガーディアンを倒し、俺たちはようやく宝珠を手に入れることができた。全身に疲労が溜まり、緊張の糸がようやく解ける。
「でも、気を抜くのはまだ早いわ。この遺跡を無事に出ないと意味がない」
アリサが厳しい口調で言うが、その表情には安堵と達成感が滲んでいた。俺たちは遺跡の入口に向けて足を進めた。
地底湖での後始末
通り過ぎた地底湖のエリアに戻ると、まだ服が濡れたままだった俺たちは改めて冷たい感覚を意識した。
「寒い……やっぱりこのままじゃダメだね」
リーナが震えながら、服を握りしめる。サラも眉をひそめながら、自分の濡れた袖を見下ろしている。
「濡れたまま夜を過ごすなんて無理よ。早く火を起こして乾かさないと風邪を引くわ」
アリサの提案で、遺跡から少し離れた安全な場所でキャンプを張ることになった。
キャンプでの着替え
焚き火の炎がゆらゆらと揺れ、暖かな光が辺りを照らす。俺たちはそれぞれ濡れた服を乾かすため、予備の服を取り出して着替える準備を始めた。
「レイちゃん、どうする?私たち、向こうで着替えちゃうけど……」
リーナがにこやかに言いながら、焚き火から少し離れた岩陰を指差す。俺は少し焦ったが、ここで男性っぽい反応をするわけにはいかない。
「あ、うん。大丈夫。私はここで……」
「え?でも、レイちゃんも濡れてるよ?ちゃんと着替えないとダメだよ!」
リーナが真剣な顔で心配してくる。その視線に耐えきれず、俺は慌てて頷いた。
「そ、そうだね。じゃあ……後で着替えるから、先に行ってて!」
「うん、わかった!」
リーナとアリサ、そしてサラがそれぞれ予備の服を持って岩陰へと向かっていった。焚き火の光が届かない位置で、彼女たちの楽しそうな声が微かに聞こえる。俺は焚き火の前で一人残り、濡れた服の感覚と、胸の高鳴りを必死に抑えていた。
「……落ち着け、俺。普通に振る舞え」
心の中で自分に言い聞かせながら、俺はそっと予備の服を取り出した。しかし、ふと岩陰の方を見ると、リーナがふざけたように笑い声を上げ、アリサに何か話しかけている。
「もう、リーナ。ふざけないで早く着替えなさい」
「だって寒いんだもん!」
そのやり取りに、俺の想像が勝手に広がりそうになり、慌てて目を逸らす。だが、微かに見えるシルエットが、どうしても気になってしまう自分がいる。
「ダメだ……!早く着替えないと」
俺は自分を奮い立たせ、濡れた服を脱ぎ始めた。しかし、女性用のキャラクターとして作られた体を見て、なんとも言えない違和感と、妙な興奮を覚える。
「……こんな時に何考えてるんだ、俺……」
顔が熱くなるのを感じながら、俺は急いで予備の服を着て、濡れた服を焚き火の近くで乾かすために広げた。
焚き火の団らん
しばらくして、アリサたちが岩陰から戻ってきた。新しい服に着替えた彼女たちは、少しホッとした表情を浮かべている。
「やっぱり乾いた服はいいわね。これでゆっくり休めるわ」
アリサが焚き火に当たりながら言うと、リーナが笑顔で頷いた。
「うん、明日には街に帰れるし、お風呂にも入れるし、楽しみだね!」
「そうね。お風呂で疲れを落としたら、次の冒険の準備をしましょう」
アリサがリーダーらしく冷静にまとめる中、サラは剣を磨きながら小さく呟いた。
「……ま、次の冒険もあんたたちが足を引っ張らないなら付き合ってあげるけど」
そのツンデレな態度に、俺とリーナは思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
「ありがとう、サラちゃん。これからもよろしくね」
俺が声をかけると、サラは少し顔を赤らめてそっぽを向いた。
「……別に、当然でしょ」
夜の決意
夜が更け、俺たちは順番に見張りをしながら眠ることになった。焚き火の光が弱まる中、俺は寝袋に包まりながら、これまでの冒険を振り返っていた。
「……みんな、いい仲間だよな」
俺は仲間たちと過ごす時間の大切さを改めて感じながら、次の街に帰ったら彼女たちのために何かできることを考えようと思った。そして、自分が「女」として扱われていることに少し複雑な気持ちを抱えながらも、この冒険の世界での自分の居場所を再確認した。
次回予告
次回、第12話では街に到着し、冒険者ギルドでの報告や報酬の受け取りが描かれます。また、宿屋での休息や街での日常を楽しむ中、リーナやアリサたちとの絆がさらに深まるエピソードをお楽しみに!
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