第8話水の迷宮と輝く甲殻の罠

広がる地下湖


俺たちは《忘れられた古代遺跡》の次のエリアにたどり着いた。その場所は広大な地下湖だった。静かな水面には微かに光が反射し、天井に揺れる模様を映し出している。その美しさには一瞬目を奪われるが、同時にこの場所の不気味さも感じられた。


「……ここが次のエリアね。湖の中央に小さな島があるけど、どうやって行けばいいのかしら?」


アリサが湖の奥を指差しながら言った。その島にはいくつもの石像が並び、そこが次の仕掛けの場所であるのは明らかだった。


「橋もないし、渡る方法を探さないとだね。もしかして泳ぐの?」


リーナが湖を見つめながら肩をすくめる。サラは鋭い目つきで湖面を睨み、すぐに首を横に振った。


「待って。この湖、普通の水じゃないわ。たぶん何か潜んでる」


その言葉に全員が警戒を強めた。その時だった。湖の中央から突然水しぶきが上がり、巨大な甲殻類のモンスターが姿を現した。


「出た……!」


透明な体が水晶のように輝くそのモンスターは、「クリスタルクラブ」と呼ばれる魔法生物だ。その硬い甲殻と魔法反射の特性を持つことで知られている。


「気をつけて!このモンスターは魔法を反射するわ。近接攻撃で戦うしかない!」


アリサが叫び、俺たちはすぐに戦闘態勢に入った。


水辺での戦闘


クリスタルクラブはその巨大なハサミを振り上げ、地面に叩きつけてきた。衝撃で水しぶきが舞い上がり、足元が滑りやすくなる。俺たちはなんとかバランスを取りながら、攻撃の隙をうかがった。


「リーナ!危ないから後ろに下がってて!」


アリサが剣を構えながら指示を飛ばす。しかし、リーナはその場を動こうとせず、杖を握りしめた。


「でも、何か手伝えることがあるはずだよ!」


そう言いながらも、リーナは足元の水たまりに気を取られ、バランスを崩してしまう。


「きゃっ……!」


リーナが滑りそうになったのを見て、俺は咄嗟に手を伸ばした。なんとか彼女を支えたが、その勢いで俺たちは水辺に倒れ込んでしまう。


「……っ!」


冷たい水が服に染み込み、俺たちはびしょ濡れになった。俺の視線の先には、濡れた服が肌に貼りついたリーナの姿があった。彼女は何事もなかったかのように、明るい笑顔を浮かべている。


「ありがとう、レイちゃん!助かったよ!」


リーナはいつも通りの明るさで感謝を伝えてくるが、俺は逆に心臓がドキドキしてしまい、視線を逸らすのに必死だった。


「あ、あ……全然平気よ!だ、大したことないから!」


俺は慌てて答えながら、濡れた服を手で押さえた。顔が熱くなるのを感じ、必死で興奮を隠そうとする。


「……どうしたの?レイちゃん、顔赤いよ?」


「い、いや!なんでもないの!」


俺の必死な態度にリーナが首を傾げる中、サラの怒鳴り声が飛んできた。


「ちょっと、何やってるのよ!早く立ちなさい!」


サラの声で我に返り、俺たちは急いで体勢を整えた。その間にもアリサとサラはクリスタルクラブを相手に懸命に戦っていた。


戦局の打開


「このモンスター、硬すぎるわ……!」


アリサが剣を振り下ろしても、クリスタルクラブの甲殻はほとんど傷つかない。サラも果敢に攻撃を仕掛けるが、効果は薄い。


「私たちだけじゃ無理があるわ。リーナ、何か支援できる?」


アリサが振り返り、リーナが頷く。


「うん、この湖の水を使えば……!」


リーナが杖を掲げ、水の魔法を発動させた。水流が渦を巻き、クリスタルクラブの動きを封じ込める。


「ナイス、リーナ!今がチャンスだ!」


アリサが叫び、サラが大剣を振り上げる。彼女の力強い一撃がクリスタルクラブの甲殻を打ち砕き、その巨体が水しぶきを上げて崩れ落ちた。


「……やった!」


リーナが歓声を上げ、俺たちはようやく息をついた。


水中の秘密


「静かになったわね……」


サラが水面を見つめながら呟く。その湖の底には、何か光るものが見えていた。


「あれは……?」


アリサが指差し、俺たちは水中に何か道のようなものが続いているのを発見する。


「どうやら湖を渡るには、あそこを通るしかなさそうね」


「濡れるのは嫌なんだけど……仕方ないわね」


サラがぶつぶつ文句を言いながらも、俺たちは水中に進むことにした。


水中を進む


湖の冷たい水に足を浸しながら進む俺たち。透明な水面に反射する光が美しく、遺跡の神秘的な雰囲気をさらに際立たせていた。


「……こんなに綺麗な場所なのに、なんだか寒いね」


リーナが水をかき分けながら震える声で言うと、アリサが彼女の肩に手を置いた。


「大丈夫よ。もう少しで向こう岸に着くわ」


俺も彼女たちに続きながら、時折サラが「足元滑るから気をつけなさいよ!」と注意を促す声が聞こえた。


次のステージへ


水中の道を抜け、ようやく湖の中央にある小さな島にたどり着いた。そこにはいくつもの古びた石像が並び、不気味な雰囲気を漂わせている。


「ここが次の仕掛けの場所ね……」


アリサが静かに呟き、俺たちは緊張感を取り戻した。


こうして、俺たちはさらに奥深いステージへと足を踏み入れる準備を整えた。


次回予告


第9話では、魔法封じのエリアに突入し、強力なモンスター「シャドウゴーレム」との戦いが描かれます。魔法が使えない中での近接戦闘が鍵となり、チームの絆がさらに試される展開にご期待ください。

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