第5話 新たなる仲間 - ツンデレ戦士サラの加入

アリサが鋭い声で指示してくれる。険しい山道を登りながら、私たちは細心の注意を払って進んでいた。足元は苔で滑りやすく、少しの不注意が命取りになる。アリサのリーダーシップに助けられながら、リーナと私はなんとか登っていく。


「この先にドレイクの巣があるなんて、考えるだけでドキドキするね!」


リーナが楽しそうに微笑みかけてくれるが、その奥にある不安も感じ取れる。私もまた、ドレイクとの戦いを前にして心臓が高鳴っていた。


しかし、そんな緊張感に包まれる中、突然後ろから冷たい声が響いてきた。


「ちょっと、あんたたち!そんな足取りで、この先の巣穴にたどり着けると思ってるわけ?」


驚いて振り返ると、そこには赤いツインテールを揺らした小柄な少女が立っていた。彼女は私たちをじろりと睨みつけ、冷たい目つきで言い放った。


「私はサラ。この辺りでモンスター討伐をしてる戦士よ。君たちみたいな素人がドレイクに挑もうって?ふん、笑わせないで」


その言葉に、リーナが少しムッとしたように口を開いた。


「私たち、素人なんかじゃないよ!ちゃんと準備もしてきたし、それに——」


「まあまあ、リーナ」


アリサが落ち着いた声でリーナを制し、サラに向かって一歩前に進んだ。アリサは冷静な表情で彼女を見つめ、小さく頭を下げる。


「サラさん、初めまして。私たちはこの先にいるドレイクの討伐を目指しています。あなたがこうして警告してくれたのも、この道が危険だからでしょう?もしよかったら、私たちと一緒に来てくれませんか?あなたの力があれば、成功の可能性も高まるはずです」


アリサの穏やかな説得に、サラは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに鼻を鳴らして肩をすくめた。


「……まあ、手伝ってあげてもいいけど?ただし、足を引っ張るようなら容赦しないから。そのつもりでついてきなさいよ」


サラはツンと顔を背けながらも、私たちの仲間として力を貸すことを承諾してくれた。


「ありがとう、サラ!一緒に頑張ろう!」


リーナが嬉しそうに声を上げるが、サラは少し頬を赤らめたまま、そっけない返事をするだけだった。


「別に……あんたたちがどうしてもって言うから手伝ってあげるだけなんだからね」


険しい道を進む間、サラはずっと私たちの前で的確な指示を飛ばし続けてくれた。岩場が崩れやすい箇所や、苔が滑りやすい場所、そして息を整えるタイミングなど、彼女の案内はどれも的確で、私たちはそのおかげで無事にドレイクの巣穴に近づいていた。


「ここからは足元に注意。焦って転ばないこと。もしつまづいたら、すぐに手を伸ばすから安心して」


サラが自信満々に言う姿には、頼もしさがあふれていた。彼女の強気な態度にはどこか棘があるが、その裏にはしっかりとした責任感と、仲間を守ろうとする思いが見え隠れしている。そのギャップに、私も少しずつ彼女に信頼を寄せるようになっていった。


やがて私たちは、ドレイクの巣がある洞窟の入り口にたどり着いた。中は薄暗く、湿った空気が体にまとわりつくようで、苔の香りが微かに漂っている。まるで息を潜めた何かがこちらを待ち構えているかのような、不気味な静寂が漂っていた。


「さあ、ここからが本番よ。気を引き締めていくわよ」


サラが鋭い目つきで前方を睨みながら宣言し、アリサもそれに応えるように頷いた。


「サラと私が前衛でドレイクを引きつけるわ。リーナは後方で回復のサポートをお願いね。レイは魔法で援護して」


「わ、わかったわ!」


皆が戦闘態勢に入り、それぞれの役割を確認し合う。狭い洞窟の中で互いに息を合わせながら進み、ついにドレイクが巣食う最奥にたどり着いた。


洞窟の奥から聞こえる重々しい息遣い。その暗闇の中で、鋭い爪を持つ巨大なドレイクがゆっくりと姿を現した。背中から青白い炎が立ち上り、血のように赤い瞳がこちらをじっと見つめている。


「いくわよ、みんな!」


サラが叫ぶと同時に、ドレイクが激しい咆哮を上げ、私たちに突進してきた。サラとアリサが前線で応戦し、私は後方から援護魔法を放ちながら二人を支援する。リーナも集中して回復の魔法を準備してくれている。


「レイ、もう少しこっちに寄って!」


アリサが叫び、私は慌てて彼女の隣に駆け寄った。しかし、その瞬間、ドレイクが鋭い爪で襲いかかってきた。アリサはとっさに私を庇うようにして体を寄せてくれ、その衝撃で私は彼女の胸元に押し付けられる形になった。


「あ……」


一瞬の出来事だったが、アリサの体の温かさと柔らかさがダイレクトに伝わってくる。顔が熱くなるのを感じながらも、戦闘中ということもあり、慌てて意識を切り替える。しかし、鼓動の速さは隠せず、ドキドキと胸が高鳴る。


アリサは真剣な顔で私に声をかけてくれた。


「大丈夫?無理しないで、しっかりと支えているから」


彼女の気遣いに、私も少し安堵しながら小さく頷いた。


「うん……ありがとう」


その時の彼女の優しい表情に、改めてアリサへの信頼感が深まっていくのを感じた。そして私も彼女の支えを受けて、戦いに集中するため気持ちを引き締めた。


その後も、激しい戦闘が続く中、私たちは協力して次々と攻撃を繰り出し、ドレイクに少しずつダメージを与えていく。サラは果敢に前線で戦い続け、その実力をいかんなく発揮していた。彼女の勇ましい姿には感嘆の念を抱かずにはいられない。


「さすがサラさん、頼りになるわ」


リーナが小声で感心しているのを聞き、私も頷いた。サラの勇敢な姿を見るたびに、私たちはより強い信頼感を感じるようになった。


激しい戦闘の末、ついにドレイクが力尽き、地面に倒れ込んだ。私たちは皆、息を切らしながらも無事に討伐できた達成感に満たされていた。


「やった……!ついに倒せたのね!」


リーナが喜びの声を上げ、私たちも笑顔で彼女に応える。サラも肩で息をしながら、少し照れくさそうに私たちを見つめていた。


「ふん、あんたたちもなかなかやるじゃない。……ま、私がいなかったらどうなってたか分かんないけど」


サラが照れ隠しのように強気な言葉を投げかける。そのツンとした態度に、思わず私たちは微笑んだ。こうして彼女との距離が少しずつ近づいているのを感じた。


洞窟を抜け、夕日に染まる山道を歩く中、私たちはお互いに感謝の言葉を交わした。新たな仲間、サラの加入により、私たちの絆はさらに強まり、未来への希望が膨らんでいく。


新たな冒険が待つ未来へと、私たちは一歩ずつ進んでいくのだった。

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