第4話 戦士アリサの弱さと信頼

バーニングウルフとの激戦から数日が経った。


アリサとの共闘を通じて、俺たちはさらに強く結束し、彼女のリーダーシップと頼りがいに心から感謝している。リーナもアリサとの冒険を楽しんでいるようで、俺たちは日々のクエストを通じて絆を深めていた。


今日はギルドに集合して、新しいクエストについて話し合う予定だった。だが、ギルドに到着してもアリサの姿が見当たらない。


「アリサ、遅いね……」


リーナも少し心配そうな表情を浮かべている。いつも時間に正確なアリサが遅れるのは珍しいことだった。


「何かあったのかな?一度、彼女の宿に行ってみるか?」


リーナも頷き、俺たちはアリサが泊まっている宿屋へと向かうことにした。宿屋に着くと、宿の主人がアリサの部屋を指差してくれたので、俺たちはその部屋をノックした。


「アリサ、いるか?俺たちだよ、レイとリーナだ」


数秒の沈黙の後、かすかな声が返ってきた。


「……入ってもいいよ」


戸惑いながらもドアを開けると、アリサがベッドに腰掛けていた。いつも凛々しい彼女の表情には、どこか疲れが漂っている。


「アリサ、大丈夫?体調が悪いの?」


リーナが心配そうに問いかけると、アリサは小さく微笑んだが、その笑顔にはいつもの力強さがなかった。


「ちょっと無理をしすぎたみたいだ……バーニングウルフとの戦闘の後、体に疲れが残ってたみたいでね」


アリサの言葉に、俺たちは驚きを隠せなかった。あの時、彼女は疲れなど微塵も見せず、むしろ頼もしい背中を見せてくれていたのに……。彼女も一人の人間であり、俺たちに見せないところで無理をしていたのかもしれない。


「無理するなよ、俺たちももっと頼ってくれていいんだぜ」


俺がそう言うと、アリサは少しだけ驚いた表情を見せた後、照れくさそうに目を逸らした。


「……君たちに弱みを見せるなんて、恥ずかしいじゃないか。でも、ありがとう」


その言葉にはいつもの強さとは違う、柔らかさが感じられた。アリサが俺たちに心を開き、頼ってくれることが嬉しく、そして少しドキドキした。


その夜、俺たちはアリサの部屋で一緒に食事を取ることにした。簡単な料理だったが、皆で食べると不思議と美味しく感じる。アリサもリラックスした表情で、ゆっくりと料理を口に運んでいた。


「……レイ、リーナ。もし良かったら、今日はここにいてくれないか」


ふと、アリサが呟いた。その言葉には、どこか不安が滲んでいるように感じられた。


「えっ……?もちろん、いいよ」


リーナが快く答えると、俺も頷いた。アリサはほっとしたような表情を浮かべ、少しだけ肩の力を抜いたように見えた。


「ありがとう。実は……私は小さい頃から、一人でいることが苦手なんだ。戦士として強くあろうと努力してきたけど、やっぱり……弱い部分もあるんだよ」


アリサがそう話すのは、初めてだった。彼女が強くあり続けるために、自分に厳しく接してきたこと、そしてその影で孤独や不安を感じていたことに、俺たちは気付かされた。


「そんなことないさ。俺たち、アリサに助けてもらってばかりだし、こうして頼ってくれて嬉しいよ」


そう言うと、アリサは顔を赤くして小さく笑った。


「レイは、優しいんだな。……ありがとう」


その時、俺はふとアリサが弱さを見せた姿に、普段の彼女とのギャップに胸が高鳴るのを感じた。強く凛とした姿の裏に隠れた繊細さが、さらに彼女の魅力を引き立てているように思えた。


その後、俺たちは床に座って、しばらく雑談を楽しんだ。冒険の話や、この世界での生活のこと、そしてそれぞれの目標などについて語り合う。アリサは普段は見せないような穏やかな表情を浮かべ、時折笑顔を見せてくれた。


「レイ、もう少しこっちに寄ってもいいか?」


アリサがそう言って、俺の肩にそっと寄りかかってきた。彼女のぬくもりが伝わり、心臓が跳ね上がる。


「え、えっと……」


「あ、嫌だったか?」


アリサが少し不安そうに聞いてくる。いつものアリサなら絶対に見せない、そんな表情だった。


「いや、全然……その、むしろ嬉しいよ」


思わず顔が熱くなるのを感じながら、俺は彼女にそう告げた。アリサは小さく笑い、さらに俺の肩に頭を預けてきた。


「君って、本当に優しいんだな……なんか、こうしてると安心する」


アリサの弱さを感じる瞬間に、俺の中で彼女への想いが少しずつ変わっていくのがわかった。彼女の隣にいたい、支えたい、そんな気持ちが心の中に湧き上がってきた。


その夜、俺たちはアリサの部屋で一緒に過ごし、夜が更けるまで語り合った。そして、次のクエストに向けて、さらに深まった仲間としての絆を感じた。


翌朝、アリサは完全に元気を取り戻していた。


「昨日はありがとう、君たちのおかげでゆっくり休めた」


アリサはいつものように凛々しい表情を取り戻し、俺たちに感謝を伝えてくれた。その姿に、リーナも俺もほっとしたように微笑んだ。


「私たちは仲間なんだから、これからもどんどん頼ってほしいな」


リーナがそう言うと、アリサはうなずき、少し照れたように目を逸らした。


「わかったよ……君たちの言葉、しっかり受け取った」


その後、俺たちはギルドへ戻り、新たなクエストを受けることにした。今回のクエストは「ドレイクの巣穴」への潜入調査で、かなり難易度が高いとされているものだ。だが、アリサも含めて俺たちの士気は高まっており、これならばきっと成功できるだろうと自信に満ちていた。


「よし、行こうか!」


アリサが力強く声を上げ、俺たちは意気揚々と出発した。彼女とリーナ、そして俺。今や、俺たちは互いに信頼し合う仲間となり、どんな困難にも立ち向かえるような気がしていた。


道中、アリサがふと口を開いた。


「昨日は本当に助かったよ、君たちがいてくれてよかった」


アリサが改めて俺たちに礼を言ってくれる。その表情には、昨日まで見せなかった穏やかさと、俺たちに対する信頼が感じられた。


「俺たちも、アリサがいてくれて心強いよ。どんな敵が来ても、絶対に勝てる気がする」


俺がそう言うと、アリサは少し照れながらも嬉しそうに微笑んだ。その笑顔はとても魅力的で、普段の戦士としての彼女とは違う可愛さがあった。


「……ありがとう、レイ」


アリサの声がいつもよりも柔らかく感じられ、その言葉が俺の胸に深く響いた。


こうして俺たちは、新たな冒険と共に一歩一歩前進していく。アリサの強さと弱さ、その両面に触れることで、俺は彼女をさらに大切に思うようになっていた。そして、この旅の中で俺たちがどれだけの困難を乗り越え、どんな成長を遂げるのか……それは誰にもわからないが、今ならば何があっても彼女たちと共に歩んでいける気がする。


次回、さらに多くの女性仲間が加わり、俺の冒険はますます賑やかになっていく。

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