48 続、本当の自由とは…
札幌、富良野、旭川、小樽…と1週間ほどかけて、1人でふらふらと観光して回った。
昼はご当地ラーメンや丼を楽しみ、夜はカウンターのある居酒屋で各地の名物を堪能し、地酒を呑み、ビジネスホテルに泊まった。
前回の家出と違い、今回は周りに話してから出てきたので旅だ。
私は家出少女から旅人になった。
気付けばもう19歳になっていた。
お金もある。
どこに行っても良い。
何をしても、しなくても良い。
「自由でいいね!」
「羨ましいなぁ…」
と言う人もいたけど、それは違う。
そんな事を言う人の方が、本当は自由で、羨ましいと思う。
一応試しに、
「そんな風に思うなら、全部捨てて、旅に出ちゃえばいいじゃないですか?」
と聞いてみると、
「いや!仕事があるから無理だよ!」
とか、
「やっぱり家族を置いて行けない…」
と言う。
ほら、辞めたくないと思える仕事。
そして離れられない大切な人がいるんじゃないか。
私が1人、当てもなく必死で探し、彷徨う程に、それらがどんなに尊い素晴らしい事か、皆は知らないようだ。
私には、守る自由も、捨てる自由もない。
だって、守るモノも、捨てるモノも何も無いんだから。
「自分探しの旅か…青春だなぁ」
なんて言う人もいたが、それも違う。
私が探していたのは『自分』では無い。
守りたいと思える何か、決して捨てれない誰か…。
私にとってそれは最高のセックスが出来る相手『運命の人』だと確信していた。
映画や小説なら、こういう旅に出会いは付き物のはずだ。
運命の出会いを期待した。
が…何も無かった。
最愛の人との出会いはもちろん。
人生を変えるような光景や趣味、仕事などの出会いも…やっぱり何も無かった。
何も無くてもお腹は減るし、休む場所も必要だ。お金は容赦なく減っていき、そろそろ働かなくてはと危機感を感じた。
本当は夜の仕事はもう懲り懲りだし、真っ当な昼の仕事をしたかったが、1人暮らしは贅沢をしなくても色々とお金がかかる。
昼の仕事だけでは、遊ぶ金はおろか、食べる物にも困ると言って、複数の仕事を掛け持ちして
「眠い…」
「つらい…」
とヒーヒー言いながら働く人を何人も見てきた。
私にはそんなしんどい事は、無理だと思う。それに出会いが欲しかった。
キャバクラなら、おじさんだけじゃなく、若い人も割と来る。
同僚のキャバ嬢達が彼氏の友だちや、地元の先輩なんかを紹介してくれたりと、出会いには事欠かないだろう。
今回はナンバー1になって稼ぐ為じゃない。
私は本気で婚活をする為に 歓楽街として有名な札幌の中でも、一番人気で大箱のキャバクラで働くことにした。
実際に道内はもちろん、日本中から旅行や出張で訪れる男達と毎日たくさんの出会いがあった。
だけど運命を感じるパートナーにはなかなか出会えなかった。出会える気もしない。
掠りもしない感じ…恋愛モードになれなかった。
だからと言ってお仕事モードでも上手くいかない。
ある程度可愛くて、愛想が良くて、気の利いた話の出来る私は、すぐに客が付き売上げを伸ばした。
だけど、ここでもやっぱり選ばれしトップの姫君達には、全く歯が立たなかった。
早くも3ヶ月程で先が見えた気がして、なんだか絶望的な気分になった。
毎日たくさんの男に出会っても出会っても恋愛が出来ない。
仕事も辛いだけで意欲が湧かない。
いつ辞めてもいいとしか思えない仕事を、いつ捨ててもいいとしか思えない人間関係の中で続けるのは苦痛でしかなかった。
でも頼れる人もいない私は、働かなくては、食べて行けない。
食べない=死だ。
死ぬか、我慢か…しかない。
私なんて本当は、全然自由じゃない。
愛に飢え、夢や希望にも飢え…。
貧しい心で、ただ闇雲に耐えるしかない。
不自由極まりない日々だった。
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