45 愛 LOVE エリ♡
「彼氏とケンカしちゃって…。
行くとこないから泊めてぇ♡」
とエリに頼まれたその日、私は心底とまどった。
梅田のキャバクラで、ほぼ同時期に働きだした18歳で、同い年のギャル…。
エリは子猫みたいに人の懐に入り込むのが上手い子だった。
私は友達付き合いが苦手だ。
何故だかいつも上手くいかない。
ようやく上手く行ったと思えたユカリちゃんは、相変わらず仕事が忙しく、私以外にもたくさんの友達がいて、おまけに彼氏のカワちゃんとラブラブだしで、気付けば色々とすれ違うようになり、もう一年程会っていなかった。
中学の悪友ミッちゃんは、半年程前に出来ちゃった結婚して、すでにママになっていた。
「遊ぼぉ!」
と向こうから連絡はくれるけど、私はどうしても会う気になれなかった。
多分悔しいからだ。
同じように愛を求めフラフラしている同志だと思っていたのに、早々に結婚して、幸せな家庭を築いた裏切り者のように感じた。
もちろんそんなのくだらない勘違いで、むしろ10代で結婚して子育てなんて色々大変だろうし、相談に乗ったり気晴らしに付き合ったりしてあげるべきだったと思う。
でも私はそんなに器の大きい人間じゃなかった。
羨み、疎み、拒絶した。
ユカリちゃんもミッちゃんも女は皆、どんなに心を通わして、通じ会えたと思えてもそれでお仕舞い…。
所詮、私は彼女達にとって、男に会えない間の暇潰しだったり、はたまた男と上手くやっていくための相談相手。
それとも愚痴の吐き場所か…。
結局はその場しのぎの脇役Bなのだ。
(もしかしてギリギリZかもしれないくらいだ。それともその他大勢のエキストラ?そうじゃないと信じたい。せめて脇役B位で勘弁して下さい。お願いします)
気付けば私のヒロイン達は私じゃなく、彼女達のヒーローの元へしっぽを振って帰って行く。
私は1人寂しく舞台の袖にひっこむ…。
そんな風に感じていたから、最初はじゃれてくるエリが正直めんどうだった。
怖かったのだ。またどうせ私が1人ぼっちなことを思い知らせに来た小悪魔に見えた。
でも屈託のない笑顔で話しかけられ続け、つい気を許してしまった。
滋賀から彼氏と同棲するため、少し前に大阪に出て来たばかりで、近くに頼れる友達も、家族もいなくて困っていると言う。
それで酔いも手伝い一度位まあ良いか…。
と出会ってまだ2週間くらいだったが、泊めてあげたら、ちょくちょく泊まりに来るようになり、ついに… 。
「彼氏にまた殴られた!
あんなDV男とは別れて家出ようかなって思うから一緒に暮らそう!
で、この家じゃ狭いから、もうちょい広いところに引っ越そうよ♡」
と出会って3ヵ月ほどたったある日、エリは唐突に自分勝手な提案をしてきた!
急にそんな無茶苦茶な事言われても無理だと、断れば良かった。
でも出来なかった。
彼氏にやられたという、顔や腕の傷が痛々しく放っておけなかったのもある。
だけど1番の理由は、すでに私がどうしよもなくエリの事が好きになっていたからだ。
ユカリちゃんに抱いた感情と似ていた。
大好きで、ずっと一緒に居たい…。
でも、ユカリちゃんが男だったら良かったのに…。と思ったのとは逆に、今度は私が男だったら…。と強く願った。
この子を私が幸せにしてあげたいと本気で思う様になっていた。
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