43 大人の遊び場ラウンジ

 16歳、人肌恋しくなる冬。

 次に選んだ職場は大人の遊び場、ラウンジだった。

 

 大阪一の観光地、心斎橋のすぐお隣、船場。

 そこは大企業のビルが立ち並ぶオフィス街だ。

 

 そんな企業戦士の町の地下に、ひっそりと隠れるようにその店はあった。

 ほとんどのお客様が、接待のサラリーマンで、仕事上のお付き合いとして来る為、マナーをわきまえた綺麗な飲み方をする人が多かった。

 

 30~40代の働き盛りで遊び盛りの、良い男との出会いがたくさんで、毎日お見合いや合コン気分で出勤した。


 真面目に働いている、常識ある普通の大人の男達と普通の話をして、普通に口説かれ、普通のセックスをした。

 

 それは普通に楽しかった。

 

 私に抜けていたのは、こういう普通の事なんだと思った。

 

 こういう普通を積み重ねて行けば、私も普通に幸せになれるかもしれない…。


 そうなれば良いなと願った。

 しかし仕事やプライベートに夢中で、学校にはほとんど行っていなかった。


 このままでは進級出来ないと担任に言われたが、やはり学校から私が学ぶべき事はもう無いと確信していたので、高校は1年間で中退した。

 

 そして春からまた1人暮らしを始めた。

 

 職場である船場のすぐお隣、新町にある新築のワンルームマンションだった。


 今度は親のお金じゃない。

 敷金礼金を払い、家賃、生活費、全てのお金を自分で賄う生活が始まった。

 

 これで親の目を気にする事なく思う存分、仕事が出来る。遊べる。

 

 本当の自由を手にした気がした。


 

 ラウンジの出勤日を増やし、たくさんの出会いを謳歌した。

 

 気付けば…普通に良い人達と、普通じゃない数のお付き合いをしていた。

 お互い好きなら?

 セックスをしたら?

 お付き合いの定義は人それぞれだろう。

 

 同時進行で10人程と真面目風なお付き合いや不真面目に不倫、セフレ、プラトニックなお友だち…。

 色んな形で私なりに愛を模索した。

 

 でも、どれも違った。


 出会えば出会うほど、話せば話すほど、セックスをすればするほど、どんどん恋をする自信が、愛し愛される希望が絶たれて逝くようだった。


 そうして恋や愛に絶望していくのとは反比例して、自分のホステスとしての才能、そしてお金を稼ぐということに、自信や希望を感じるようになっていた。

 

 私は私でいくら稼げるのだろう?

 私の本当の価値はいくらだろう?


 単純にもっと、お金が欲しい。

 もっと稼いでみたいとも思った。 


 17歳夏、半年程働いたラウンジを辞め、私は本気でお金を稼ぐべく、大阪で一番時給が高いであろう北新地のキャバクラに面接に行った。

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