40 ホスト遊び最終章

「ちょっと君!こんなところに座り込まれちゃ迷惑なんだよ!起きて!!」

 と警備員のおじさんに肩を揺すられ目覚めた。

 

 道行く人たちの視線を感じるが、誰も手を差し伸べてはくれない。


 ふらふらと立ち上がり、また1人歩きだす。

 どこかのビルの非常階段にたどり着くと、目を閉じた。





 どれくらいの時間がたったのだろう。

 

 激しい吐き気でまた目覚めた。

 めちゃくちゃ苦しい。気持ち悪い。目眩がする…たまらず立ち上がり吐ける場所を探す。

  急いで路地裏の排水口にしゃがみこみ吐いた。

 

 吐くのは、もうお手の物だった。

 服も汚さずキレイに吐ききり、水を飲んだら、なんだか今度はフワフワしてきた。

 

 そう、この感覚。

 全部どうでもイイ。

 なんか楽しい…フフフ…。


 なぜか無性にシたいと思った。

 シたい。シたい。

 ヤりたい!

 

 私は走った。

 ひっかけ橋の真ん中目指して。

 そして叫んだ…。


「エッチする人この指とぉ~まれ!!」


 何ソレ!?私バカ?

 と我ながら驚く…。


 だけどもう止まらない。

 止められない。


 いつの間にか深夜を回っていたようだ。橋には数人のホスト達がいた。


「えぇ!ホンマに?!」

 と笑いながらも、私の指に次々に止まってくれる。


 ほら、こんな私も受け入れてくれる。

 ホストは本当にイイ人達だ!

 

「で、誰とヤんの?」

 と最初に指に止まった子が聞いてくる、

「みんな!みんなでしよう!」

 と私が笑うと、

「イヤ!何でやねん!!ムリムリ…」

 と1人が離れていき、逆に、

「え!マジで!何それ!楽しそう…どこでするん?」

 と別のホストが寄ってきた。


「何処でもいいよ!あっ…階段は?どっかイイ非常階段知らない?」

 とその子と手をつないで歩き出す。

 

 私はまた何処かのホストが入るビルの非常階段に行き、ヤった。


 最初は4人ほどだったと思う。それが気付けば7人に増えていた。

 

 前にたっちゃん家で6Pしたときもそうだった。

 楽しいのは2人目位までで、3人目4人目はただただ痛い。


 後は、記憶に無い。






 

 足音で目覚めた。

 

 気付けば、非常階段の踊り場で1人、素っ裸で眠っていたようだ。

「ねぇ、生きてる?…大丈夫?」

 足音の主は、さっきのホストの1人だった。

 

「うん、死んでない。…大丈夫じゃないけど…大丈夫…」

 腰の骨の辺りと、膝、そしてアソコから少し血が出ているようだ。痛い。

 

「先輩が死んでないか見てこいって…。大丈夫だよね。もう、こういうのやめた方がいいよ。早く帰りなよ。じゃあね」

 とホストは言うと、そそくさと戻って行った。


 服も着せて貰えず、こんな所に放置とはゴミ扱いじゃないか…冷たい人達だ。

 ホストはやっぱりろくな奴らじゃない。

 

 のろのろと服を来て外に出た。

 

 日が登り始めていた。

 そろそろうんざりだ。

 もうこんなのイヤだ。

 

 こんな事していたら、いつまでたっても誰にも本気では愛されないだろう。

 

 ホスト遊びはそろそろ卒業しよう…。


 今度こそ。と本気でそう決意した私は、眩し過ぎる真夏の朝陽の中へ、まだ痛む体を引きずるようにして歩き出した。



 

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