36 進路

 中学3年の1年間は、とにかくヤって、ヤりまくった。


 戒めのタトゥーなんて、ほぼ無意味だった。


 私とする男達は皆一様に、胸元のタトゥーよりもっと下のアソコを見ていたし、タトゥーの意味なんて聞いてくれない。


 気付けばそれは、私にとってもリストカットの跡と同様に、只の古傷になっていた。


 その日1日をやり過ごすことに精一杯で、将来の事なんてまともに考えられなかった。


 勉強なんてほとんどしなかったし、もちろん帰宅部だ。


 3学期に入ると、クラスメイトは皆、志望校を決めていたが、私はどうしても入りたい学校が見付からなかった。

 というか“進学”自体、気が進まない。


 学校から私が学ぶべき事はもう無いと感じていたからだ。


 時間とお金の無駄だと思った。


「今は分からなくても、将来したい仕事を選べる様に取り敢えず高校くらい行きなさい」

 と親や先生は言う。


 だけど高校卒業の資格がないと出来ない様な仕事には、一生就きたいと思わないだろうという確信が私にはあった。


 教師や看護師、会社員など、学歴がないと出来ない様な仕事に就くのは考えられなかった。


 世間一般に言う様な、真っ当な生き方は自分には出来ないし、したくない。

 

 でも学歴が必要ない職場。

 カラオケや飲食店、キャバクラやスナックで…。グダグタ言いながらも、だらだらと働く自分はリアルに想像出来る。


 それに本当はやっぱり、大人になるまでに死んでしまいたかった。

 こんなに無茶苦茶にヤりまくっているのだ、いつか本当に性病か何かになって死ねるだろうと願っていた。


 最高のセックスをすると言う夢も、もはやどうでもよかった。

 それは私を不幸にするもので決して幸福にはしてくれないと悟りつつあった。


 しかし、今更だが実を言うと…。

 私にはコレ以外に幼い頃からの夢がある。

 

 本当はそれを実現させたい。

 辛い日々もその希望があったから死にきれず、生き長らえてしまっていた。


 それは…。

 素敵な王子様が私を見出だしてくれる事。

 いつか本当に好きだと思える人に愛し愛されたい。


 そして、その人はお金持ちで、

「もう無理に働かなくてもいいよ。君は僕のそばにいるだけでいいんだ。ずっとずっとそばにいて下さい」


 そう言って、強く強く抱きしめて欲しい…。


 バカみたい?分かる…。

 本当に本気でそんな事を願うなんて、他力本願のアホだ。大バカだ。


 でも、どんなに考えても私の願う未来はそれだけだった。


 もちろんその為には普通に学歴を付け普通に就職をするのが、普通に愛される近道だとは、私も分かっていた。


 しかし、残念ながら私はまともに授業を受ける事が苦痛でたまからなかった。


 全く興味が湧かず、ノートの隅に落書きし、飽きたら寝る…。

 こんなくだらない授業に頭と時間作ってみんなバカなの?天気もいいし、外で鬼ごっこでもしよーよ!と思い付くと、立ち上がり

「わぁぁぁ~!!」

 と叫んで逃げ出したくなる衝動を必死で押さえる始末…。


 全校生徒と先生方から変人として白い目で見られる羽目にならぬよう…。

 学歴社会の表舞台から私はそっと立ち去るべきだと思った。


 だから私は、私なりに考えて行動してきたのだ。家出をして、夜の世界で働き、合コンもしまくった。


 とにかく出会いが欲しい。

 出会って出会って出会いまくれば…いつか!

 と思っていた。


 それが私にとって、より現実的な就活で、高校に行く間なんて惜しい。


 しかし大人にそんな事言っても無駄だと分かっていた。


「どこの高校でも良いし、入学祝いもたくさんあげるし、いつ辞めてもいいからお願い!高校だけはいってちょうだい」

 と母に頼まれ、結局は一応進学した。


 私は私の知る限り、世界で1番のヤリマン変態中学生から、世界で1番のヤリマン変態高校生になった。

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