35 Love me more 戒めのタトゥー

 15歳、中学3年の秋。

 

 タトゥーを入れようと思ったのは、これから私を抱く全ての男達と、そして自分自身への戒めの為だった。

 

『腐った花』と共に『Love me more』(もっと愛して)と言う言葉を、私は文字通り胸に刻んだ。


 きっかけは、とある本との出会いだ。

「人は皆、胸にそれぞれの花を咲かせる」

 と書いてあり…それで考えた。

 

 私の花はきっと腐っている。

 

 早くに無理して咲き誇り、押されて、踏まれて、泥水を被り、異臭を放つ、腐った花。

 

 だけどそれは、皆には見えないらしい。

 そして、私も私の花を見失う時がある。


 私の花をちゃんと知って、その上でシテ欲しい。

 私も自身の花を忘れ、もうこれ以上無駄に傷付きたくなかった。


 私の花は決して可憐で美しくなんてない。


 そんな勘違いをしてはいけない。分かりやすく書き記して置くべきだ。


  

 もう1つ『Love me more』

 

 私を抱く男には、せめてその瞬間だけでも良い。もっとちゃんと私を愛して欲しかった。

 そして私も、私自身をちゃんと愛せるようになりたい。

 



 アメリカ村で見付けた、小さな看板の小さな店に思い切って入った。

 

 身分証はユカリちゃんのお姉ちゃんの保険証を借りた。

 


 それはすごく痛かった。


 刃溢れして切れ味の悪いカッターで、ゆっくりと何度も同じ場所を切り刻まれる様だった。

 

 当時私は、心と身体の痛みへの恐怖からか、あるいは只のエロへの探究心からか、SMに興味があり、少し勉強していた。

 

 それを活かす時だと思った。

 

 痛みを快楽に切り替え、昇華させてあげられないか…。

 

 本当に恐るべき中学生だ。

 

 私はそれを実行し、成功させた。

 

 逃げ出したくなるような、骨に響くその痛みを、悶えるような快楽のスイッチに切り替える…。

 そして最後には施術台の上で、こっそりと絶頂を迎えた。

 

 激しい快楽の波の中で、やっぱりSMクラブで働いてみようかなと思い…イヤイヤ、それでは本当に愛されルートから外れてしまうと、思い直した。

 

 として、コレはやはり私に必要だと早速実感し、胸元の入れたてのタトゥーに、そっと手をあてた。

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