32 ヤバいヤツ

「スッゴくカッコいい先輩らの出所祝いに誘われたから一緒に行こう!今から迎えに行くわ!!」

 と、夏休みに入ってすぐマサエちゃんから連絡が入った。

 

 マサエちゃんは、ユカリちゃんの地元の大親友で、女の子とは思えない程メチャクチャケンカが強い女番長みたいな人だ。

 

 そのヤバい人の“先輩”の“出所祝い”って…まじでヤバそう…。と気が引けたが、断りきれなかった。

 

 マサエちゃんが原付で迎えに来てくれ、私はその後ろに乗るよう促され、初めて原付に乗った。が…これがもう既にヤバかった。

 

 自転車の2人乗りもしたことが無いのに、いきなりの原付デビュー。

 しかも、マサエちゃんはお構い無しにビュンビュン飛ばす。


 当然メチャクチャ怖い!

 でも、慣れてくるとそのスリルが楽しい。


 ガンガン車を抜き、風を切るように走るのは最高に気持ちが良かった。


 辿り付いたのは、大阪市のお隣、大東市にある築浅で綺麗なアパートだった。

 

 チャイムを押すと、ドアが開き、中からプロレスラーみたいに厳つい男が出て来て、外見とは裏腹にすごく可愛い笑顔で手招きをした。

 

「モトキ!お務めごくろー様でした♡」

 とマサエちゃんがその男に軽くハグをした。

 早速、元犯罪者とご対面してしまった!

 

 そういえば何の罪で服役していたのか聞いていなかった。


 気になったが今さら聞けない。

 一瞬怖くなるが、マサエちゃんと一緒だから大丈夫。そう思える不思議な貫禄がマサエちゃんにはあった。

 

 中に入ると、2LDKの割りと広い部屋だった。


 リビングでは同じく厳つい男が4人、すでにほろ酔いで楽しそうに呑んでいた。

 

「コレ、ウチのヤバい後輩♡」

 とマサエちゃんが、私を男達に紹介した。

 

 ヤバいと思っている人にヤバいと紹介されるなんて!

 と驚いていると、彼らも、

「何がヤバいねん?!」

 と笑う。

「まあ、いいわ。カンパイしよ!!」

 とその日も、出所祝いと言う名の合コンが始まった。

 

 聞けばどうやら彼らは皆、元暴走族とか、ヤンキーとか呼ばれる人達らしい。

 数年前に成人した今は、ここで共同生活をしながら、普通に働いているそうだ。

 

 世間一般から観れば、ヤバい、怖い人達なんだろう。でもこうやって一緒に呑んでいると、まったくそうは思わないから不思議だ。

 

 むしろ、やさしい良い人達だった。


 そして年上だけど、言う事、やる事がバカみたいで可愛いと思う。

 

 夜が更け、酔いが回って来たころ、ユカリちゃんやマサエちゃんがスッゴいイケメンだと言っていたカズヤと言う男に、

「ちょっとこっち来て」

 と隣の部屋に誘われ付いて行った。

 

 わざわざ2人きりで、別室に移動なんて、もしかしてそういうコトかな?と思っていると案の定、

「久しぶりの女の子で、もう我慢できひん。シテ良い?」

 と聞かれ、キスをされた。

 

 プロレスラーみたいな男と同様に、今日はこの人の、出所祝いでもあるらしいことを思い出し、

「禁欲生活お疲れ様でした。私なんかで良ければ是非どうぞ…。」

 と受け入れる事にした。

 

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