29 虚無の世界
冴えない童貞の大学生に、顔射され最低な気分で車に戻ると…。
「本当にごめん!もう一件だけお願いします」
とドライバーさんに頭を下げられた。
「いや…無理です!
さっき色々あって顔洗っちゃったんで素っぴんだし…何よりごめんなさい。もう眠たいです…。もう、本当に無理です!」
と懇願したが無駄だった…。
あれは多分淀川だと思う。
川沿いのなんとも趣のあるアパートの前で
「じゃ、お願いします!大分待たせちゃったから、謝っといてね」
と言われあっけなく降ろされた。
仕方なく、またチャイムを押す。
ドアが開き、挨拶をする。
今度は30代前半と思われる、働き盛りのサラリーマンと言った感じのごく普通の青年だった。
遅れたことを詫び、自己紹介をして、シャワーを浴びる。
「この店にしては、珍しく若くて可愛い子が来たから頑張っちゃおうかな…」
とクタクタの今の私にとっては全く嬉しくないやる気を出して頂き、途方に暮れる。
丁寧な前戯に加え、激しさが過ぎる本番…。
クタクタを通り越し、グダグダのドロドロ…。
からの、カラカラのサラサラ…。
対には、虚無の世界にまで至っていた…。
明け方…。
ようやく全てが終わり車を降りる時、給料を手渡された。
それは14歳の少女にとって、目を疑うような大金だった。
10代の子供が1年で1番お金が貰える年末のお楽しみ、お年玉の倍近くあった。
本当に辛く、大変だった。
だけど、一晩でこんなに稼げるなんて!と唖然とした。
帰りの車内では、ずっと、もうごめんだ。こんな事2度としないと思っていた。
でも…と、その日10回目のシャワーを浴びながら感じていた。
…セックスの余韻を。
私は、きっと近い内にまた、
「今から出勤したいんですけど…」
と連絡してしまうだろう。
だってこんなに簡単に性欲と自尊心が満たされ、しかも大金が手に入る!
自分がとんでもない扉をまた開けてしまったのを他人事のように、でもはっきりと自覚していた。
きっと私はもう本当に普通には生きられない。
どんどん落ちて逝くのだろう。
でも怖くない。
むしろ落ち着く。
恋や友情、キラキラ光る夢や希望、未来…なんかじゃなく…。
何処までも後ろ向きに不幸に自滅していく様を思うと、ほっとする。
そう思いながら、眠った。
深く、安らかに。
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