26 ラブホ研修

 初めての助手席は、きっと好きな人とのデートになるんだろう…と夢見ていた。


 それがまさか、デリヘルの面接になるなんて思ってもみなかったな…。

 と男の質問に答えながら、少し感傷に浸った。


 思った通り、普通じゃない店だからか、年齢確認は適当なもので、14歳なのに普通に働けることになり、研修とやらをさっそくそのドライバー兼、面接官の男から受けることになった。

 

 場所はラブホテル。

 これも、いつか好きな人と♡と思っていたのに、さっき会ったばかりの他人と来てしまった。

 

 相手が義務的で何の照れもないから、こちらも義務的で何の照れも感じなかった。


 手や局部を念入りに洗い、うがいもするようにと指導され、洗われて、洗わされた。


 デリヘルにもルールがあるそうだ。


 キスもフェラもクンニもOK。

 だけど、挿入だけは違法になるから絶対禁止だと言う。


 それは、もはやセックスでは無い。でもだから合法的で世間的にはいいのか?

 

 でも私はそんなの嫌だ。

 

 シブちゃんが外出しする瞬間の事を思い出していた。

 

 せっかく少しは気持ちよくなってきた時に、スッと引き抜いて、私のことは置き去りで、一人だけ気持ち良く終わらせる時のあの膣から心までサァーと冷えて行く感覚。


 帰りたいと思った。でも、男はお構い無しでベットに移り、

「はい、抜いてみて」

 とさも当たり前の事のように素っ裸で寝転がりながら言った。


「はい、分かりました」

 と言うしかなかった。

 

 私は男のモノに触れる。軽く握る。擦る。

 男は義務的で何の感情も無いようなのにギンギンで熱かった。


 男って不思議だ。


 初めて会った他人で、恋心も、前戯も、ムードも無いのに何でこんなに欲情出来るのか。

 

 私は、どスケベの変態のスキモノかも知れないと思っていたが、こんな状況では全く欲情出来なかった。

 身体も心も冷たく固く閉じて、全く濡れない。


 女が全く濡れなくて、全く気持ちよく無くても関係ない。男はイク。勝手にイク。

 

 そしてそんな一人よがりで短絡的な快楽でも満足出来てしまう。


 本当にどスケベの変態のスキモノは、私じゃなくて、男達なんじゃないかと、ふと思った。


 この冷たく固く閉じた心と身体で、私は、今からこのスキモノ達とヤらなくちゃいけない。


 今さらながら1時間前の自分の行動に後悔した。こんなのイヤだ。帰りたい。と改めて強く思った。

 だけど、もちろんこのまま帰してはくれなかった。


「君、上手だね。早速だけど、初仕事行こうか。常連さんでね。すごく良い人だよ」

 と言われ、すぐにまた別のラブホテルに連れて行かれ、

「部屋番は202ね」

 とだけ言われ車を下ろされた。

 

(逃げようか…)


 と一瞬思った。

 最終電車まではまだ時間があるだろう。

 

 でもここは高速道路沿いのホテルで、近くに駅はおろか、店も家すらも無さそうだった。


 行くも地獄だが、逃げるも地獄になりそうだ。


 もう、どうにでもなれ。

 私はホテルのエントランスを抜けて202号室のチャイムを押した。


 そこは…。

 気持ち良すぎて、しかも簡単に大金が手に入る、クセになる快楽の地獄だった。

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