22 2人暮らし
「ウチも色々あるやん…。ずっと家を出て
1人暮らししたかってんけど、お金がなかなかたまらんくって…。
サヨちゃんが半分出してくれると助かるし、2人暮らしせーへん?」
とユカリちゃんが言ってくれたのは嬉しかった。
だけど、14歳の家出少女を雇ってくれるまともな店は多分無い。
もう、まともじゃないところで働くのはごめんだ。と言うと、シブちゃんが口を開いた。
「オレもサヨはユカリと2人で暮らすのが良いと思う。
多分サヨの親も、どこで何してるか分からんよりかは、ユカリって保護者が付いて、女2人で暮らす方がまだ安心やと思う。
それに多分、私立の中学や沖縄のフリースクールに子供を入れるような人達やから、入居費用とか生活費とか全部出してくれる気がするな…。
まあ、多分、中学はちゃんと通って卒業する。とか条件は付くと思うけど。
サヨは学校は嫌じゃないのか?」
「学校は嫌。だけど、まともじゃないところで働くよりはマシだと思う」
と答えると、
「じゃあ、決まりやな。サヨの親に交渉してみよう」
と話しはまとまった。
早速電話をすると、取り敢えず一度会って話しをしようと母に言われ、翌日ユカリちゃんと共に両親に会いに天王寺の喫茶店に行った。
話しは思いの外、スムーズに進んだ。
シブちゃんの言った通りだった。
公立の地元の中学に、卒業まできちんと通うことを条件に、直ぐにマンションを用意する。生活費も出すと言ってくれた。
そして、帰り際ユカリちゃんに、
「娘がお世話になりました。これからもどうかよろしくお願いします」
と父が言って、母が3万円をユカリちゃんに渡した。
「受けとれません」
とユカリちゃんが言ったが、頼むから受け取ってくれと言って帰って行った。
「めっちゃイイ親やん?!」
とユカリちゃんは言ったが私はやっぱり最悪だと思った。
芯のところが冷たいと感じた。
本当は、「ずっと一緒に暮らそうよ」「離れて行かないで」「サヨが居なくて寂しい」と言って欲しかった。
自分から出て行っておいて、そうなふうに思うのは勝手なことだと分かっている。
でも、私はずっと寂しかったのだ。
誰も私を必要としていないようで。皆、私が居ても居なくてもどうでも良いようで…。
もっと思いやって。もっと大事にして。もっと愛して欲しい。
分かっている。きっと、この望みは抽象的過ぎて叶わない。
具体的にどうして欲しいのか?
どうしたら満たされるのか?
それが分からなかった。でも我慢出来ないほどにいつもずっと、寂しかったのだ。
だけど、大丈夫。
これからは一人じゃない。ユカリちゃんと暮らす。
私は物心ついた時から、ずっと自分の部屋が有り、一人で寝ていた。一人で悩み、一人で泣いていた。
物理的に、もういつも一人じゃない。
一緒に住むのは狭いワンルームマンションだ。
きっと毎日一緒に寝ることになる。悩む時も、泣くときも、一人ぼっちじゃない。
2人暮らしなら、もう寂しいなんて泣かなくても良い。
もう大丈夫だ。
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