16 そして少女はドン底へまっしぐら
次の私の職場はセクシーキャバクラと呼ばれる過激なサービスを提供する店だった。
バイト雑誌には『おさわり無し!』の『キャバクラ』と書いてあったが、面接に行ってみると、
「この給料でそんなはずないやん!世間知らずやなぁ」
と笑われた。
「書いている条件と違いすぎます!」
と怒って辞退することも出来たはずだ。でも私にはもうその気力は無かった。
その前に何軒も電話して、面接にも3軒行ったが、身分証が無いと無理だと断られたり、寮が用意出来ないと言われこっちからお断りしたりで、なかなか仕事が決まらなかった。
前回、前々回とあっという間に仕事が決まったのはすごく運が良かったのだとようやく気付いた。
或いは、取り締まりが日に日に厳しくなったていたのかも知れない(※当時2000年)…。
やはり未成年の家出少女にまともな働き口なんてないのだ。
1日目は取り敢えずネットカフェで寝泊まりしたが、すぐ隣にある他人の気配や物音が気になり、ほとんど眠れなかった。
落ち着いて眠れないということが、私は本当にキツいようで、身も体も疲弊しきっていた。
お金もほとんど持っていなかったし、このまま仕事や住む場所が見つからなかったらどうしようと思い悩んだ。
事態は絶望的で、意識は朦朧としていた。
もう落ち着いて眠れる寮がある仕事なら、なんでも良いと思った。
そんな時にそのセクシーキャバクラだけが、今日から寮に入れると言ってくれた。
面接を受けたのは梅田の店だったが、身分証が無いと言うと、この辺は取り締まりが厳しいから無理だけど、大阪市の外れにある
後に、どちらにも勤務経験のある女の子に聞いた話によると、梅田店より十三店の方が給料は安く、その割りにサービスは過激で客もがさつで乱暴な人が多い、ハズレ店だそうだ。
大人になった今、冷静に考えると、とんでもない怖い話だ。
大通りに面したまともな店では未成年は雇えない。
だけど、場末のまともじゃない店なら未成年でも働ける。
未成年がどうしても働きたいと思ったら、今も当時もまともじゃない所でしか働けないのだ。
制服はスケスケのワンピースで、もはや下着と言うより『ランジェリー』と言う感じのセクシー過ぎるもので、接客は基本、抱っこちゃんスタイルと言うらしい、お客様の膝の上に向かい合わせに座って行う。
そして胸を出す。
客は当たり前のように触り乳首を舐める。お尻を触り、陰部も触る。
ふと見ると、横の子も、前の子も、皆おっぱい丸出しで、どこを触られても、舐められても、ヘラヘラ笑っている。
他の子もしている。大したことじゃないようだ。
最初こそ驚いたし、絶対に嫌だと思った。だけどすぐに慣れた。
身をよじって逃げると、
「金払ってんねんぞ。ちゃんと仕事しろや」
と怒る客。
逆に、
「敏感だね。可愛いいね」
と喜ぶ客。
「こんなとこで働いてちゃダメだ」
と説教する客。
一言もしゃべらずただ黙々と愛撫し続けイかそうとする客。
ずっとしゃべるだけで、触りもしなければ見ようともしない客。
色んな客がいた。
だけど、素敵な人は誰一人いなかった。
キャバクラで働いていた時は(いいかも♡)
と思える人が客にもスタッフの男にも女にも何人かいた。
だけど、ここにいる人は皆、色んな意味で気持ち悪く醜いと思った。
好きになれる気が全くしなかった。
それでも、ここが私の行きつく先だったんだと妙に納得した。
薄暗い店の中でもう何も取り繕わなくて良かった。
背伸びしなくても、良く見せようと頑張らなくても、ただ女であるだけで良かった。
それに、気持ちイイ…と思ってしまったのだ。
客の指が、舌が嫌ジャナイ…ムシロ…。醜イ人達に触ラレ舐メラレ凄ク嫌ナノニ…。
スゴク気持良イ。
モウ何モ、考エタクナイ。
モウ何モ、考エラレナイ。
ヤメナイデ、モットシテ、ッテ思ッチャウ。
アァ…私ハ、変態ッテ奴デ、醜イ、汚イ、
底辺ノ生キ物ナンダ。
モウ何モ、考エタクナイ。
モウ何モ、考エラレナイ。
ココハ、ドン底、モウ落チヨウモナイ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます