13 空っぽな私

 2000年8月末。

 大阪ミナミのど真ん中から、沖縄ののどかなリゾート地へと、私の住む場所がまた変わった。

 

 そこは理想的な場所の筈だった。

 

 小学生から高校生までが簡単に間仕切られただけの広く美しい教室で、好きなことを好きなだけ学ぶ。

 講座と教材は、それぞれの興味・関心に合わせて用意され、試験もなく基本的には、生徒自身が自分の好きなことを徹底的にやれば良いという教育スタイルを取っていた。

 

 教室も寮もホテルの一角で、キレイですごくおしゃれだった。

 私は3人部屋でメゾネットタイプの部屋の2階部分を1人で使わせて貰うことになった。

 

 ルームメイトの2人の女の子もとても優しく、明るくて親切だった。

 

 言うことなし!最高の環境だろう。

 やりたい事、夢や希望に溢れ、好きな事がはっきりしている向上心のある子にとっては!!

 

 でも私は違った。あ…間違えた、と思った。

 

 素敵な場所で、キラキラした目でそれぞれ好きな事に打ち込む彼らを余所目に、私は空っぽで…。

 ただぼぉーっとするしかなかった。

 

 最高のセックスをする。運命的な熱い恋をする。そんな夢や希望はある。

 

 だけど、親や先生に聞かれて…いや、友人にだって簡単に答えられる類いのものではない。

 私にだってそれくらいの常識はある。

 

 セックスや恋愛の勉強は学校でするものじゃない。


 それにこのスクールは男子の割合が非常に少なかった。

 そして私はもはや、同い年やちょっと上くらいの男の子なんてガキ臭くて好きになれる気が全くしなかった。

 

 2週間程は我慢したと思う。

 だけど、何をどう考えても私にとってココに居る理由、必要性は0だった。

 

 14歳の少女が実践的にセックスや恋愛を学べるのは、夜の仕事しかないと思った。

 

 誰に相談しても、反対されて説教されるのがオチだと分かっていた。

 

 私は、また荷物をまとめて失踪する事にした。

 

 周りの迷惑を考えない最低な奴だと言う人も多いだろう。

 

 実際、この時も色んな人が私を探し周り、なぜ?どうして?と心を痛めた人もいたと後に聞かされた。

 親が工面した入学金や学費なども、全てパーだ。

 

 でもそんな事どうでもいいと思えた。


 みんな私の事を本当に思ってる訳じゃなくて、自分の保身の為でしょ?

 守りたい身があっていいね。


 誰かが私のせいで、困ったり傷付くなんてむしろ気持ちがいい。清々しいとすら思うと、我ながらとても気持ちの悪い笑みが浮かんだ。

 

 何処に飛び立とうか一瞬悩んだ。

 

 沖縄の繁華街も考えたが、狭い町だ。すぐに見つかると思い、空港を目指した。

 

 今とは違いスマホはなく、通話とメール以外の機能がない携帯では情報収集が全く出来ないので、土地勘のない所に行くのは当時まだ怖かった。


 そこで私はこっそり大阪に帰った。


 そしてアルバイト雑誌をコンビニで買い、

 通学時に乗り換えで利用していた京橋駅近くの繁華街にあるキャバクラに面接に行った。

 

 運良く、そこでも当日から働ける事になった。


 寮はすぐには無理だけど一週間ほどで用意すると言われ、その間は店の子の家にお邪魔させて貰うことになった。

 

 そこはチャイナドレスが制服のカウンターだけの小さな店で、近くにBOX席も多数ある中規模の系列店が2店舗もある、

『THE大阪下町のヤクザな店』だった。

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