4 夜の世界
14歳の初夏、私は家出してキャバクラデビューを果たした。
大阪ミナミの繁華街、宗右衛門町に入ってすぐの小さな店だった。
確か男性スタッフが4人で、女の子は15人程の割とアットホームな感じの店だったように思う。
すぐに働く事になった私は、なんと早速『運命の出会い』を果たした。
男じゃない。女。
初めて親友と言うか『相棒』いや、『相方』の方がしっくり来るかもしれない、なんせ大切な人に出会ったのだ。
面接が終わると、待機席と呼ばれる入口近くのボックス席に案内され、他の女の子達に紹介された。
「もしかして、すっぴん?」
となりに座った金髪の女の子が話しかけてくれた。それがユカリちゃんだった。
そして人生初のフルメイクをしてもらった。
「あんた『みてこ』やろ?ウチは本当は16やねんけどあんたはいくつなん?」
といきなり痛いところをつかれた。
上手く騙せていると思っていたけどバレバレだったみたいで驚いたが、一気に気が抜けて楽になった。
「本当は14歳なんです」
と打ち明けると、
「えぇ!本当に?!やばいって!ウチ以外絶対誰にも言ったらアカンで!」
と少し怒られた。そして、
「なんかあったら言うんやで!守ってあげるからな」
と言ってくれた。
その言葉通り、初仕事で一緒にお客さんの席に着いた時も何かと上手くフォローしてくれ、初めての接客で初指名を貰うことが出来た。
その後も着く席それぞれ、女の子もお客さんも優しくて、思いの外楽しく、時間はあっという間に過ぎ、閉店時間になった。
ユカリちゃんともう少し話たかったが、彼女は早上がりで先に帰ってしまっていた。
実は私が彼女と本当に仲良くなるのは、もう少し先の話しで、この店ではなかった。
私はこの先、どんどん地獄へと自ら突き進んで行くことになるのだが、その地獄の淵。
もう私の人生は本当に終わったなと思ったその時に、グッと力強くこちら側に引き上げてくれる事になる。
でもこの日彼女は帰ってしまい、私は1人、夜の世界の洗礼を、受ける事になってしまう。
閉店後、サブマネージャーと名乗る小太りで一見お人好しそうな男が私を寮まで送り届けてくれることになり、そこで押し倒されてしまうのだ。
しかも他の男性スタッフと女の子数名もどうやらグルで、皆で私が処女か賭けていたらしい。
本当にツイていない。
しかしどうやら夜の世界はそんな事は日常茶飯事のようだ。
泣いても無駄。私は強くなるしかなかった。
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