3 家出少女の行方
午前の授業中は、こんなことになるなんて全く思っていなかった。
(家を出よう)
昼休みに屋上でそう思った私は、午後の授業中に計画を練り、放課後、家に帰るとすぐに荷物をまとめ一生帰らない覚悟で家を出た。
もちろん誰にも何にも言わなかった。
そして、子供だった私が必死に考えた1人でも生きて行ける場所。夜の世界に走り出した。
一番最初に目に入った看板のキャバクラで働こうと決めていた。
地下の店だった。
薄暗いビルの階段を下りながら、授業中にこっそりノートにひっ算を書いて計算した18歳だと何年産まれになるかを思い出し、何度も頭の中で確認した。
店のドアを開ける瞬間、もっと不安で怖くて緊張するかと思ったが、死ぬと決めて生きる事にした私の肝は座っていた。
店に居た2人のスーツの男の方が、私の登場に困惑しているようだった。
後で知ったが、普通は求人誌を見て連絡してから訪ねるものらしい。
それでも、この世界は想定外も想定内なのだろう。
何年産まれかだけではなく、干支も聞かれ、答えられなかったのに、すんなり話しが進んだ。
1時間後にはホステスとしてそこで働く事になり、退勤後にはそのまま寮に案内して貰えることになった。
店名は『サヨ』にした。
これも後で知ったが、私はかなり運が良かったようだ。
飛び込みですぐに雇って貰えて、しかもその日の内に寮に入れることはまず無い。
たまたま運が良かった事。そして当時だから可能だった事で、おそらく今の日本ではなかなかこうは行かない。
実際にその後、私はいくつかの店で同じように面接を受けたが、未成年ではないと証明できる身分証がなければ門前払い。
そこをなんとかクリアしても、寮がない店がほとんどだった。
(その後経験を積み、寮なんかなくても、ネットカフェで寝泊まりする事を覚えた)
とにかく、キャバクラで働くことが決まった私は、早速、夜の世界の洗礼を受けることになった。
家出少女の行く末。
当たり前のようにその日、私は男の性暴力の餌食になった。
そう、結果的に別に運なんて良くは無かった。むしろ最悪だったのだ。
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