第5話昭和の恋仲
昭和16年
桜並木の坂道には右手を添えられた背中の温もりが優しいと感じた曲がり角勇二(まがりかどゆうじ)と、看護婦の須崎八代(すざきやしろ)が並び坂の上の白熊病院を目指して歩いていた。
高知県須崎市の茗荷農場の跡取り娘は八代という名前を気に入っていたから嫁入りの時まで何が有っても改名はしない覚悟で・・・、生きて居た。
「左踵を先に着して右足を振り出すながですき膝を曲げないとイカンき、そうそう。」
膝軟骨の摩耗を気にする余り多くの啓発を残した八代は、眼を輝かせて勇二を見上げる。
「こうか?」八代を振り向き、右手には倒れまいと杖をしっかり右半身の全体重を掛けながら聞く。
「ハイ、そうなが!こじゃんと出来たきねえ勇二さん!?」優しさの眼差しはキラキラと輝きうんうんと無言で頷いていた。
瞳が潤んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます