というか、時給いくらですか?

「さぁ、想像してください。わたくしが持っているような大きな鎌を」


 死神は両手で鎌を持って左右に振っている。客引きで看板を持っている人みたいだった。


 ミミカは言われたとおりに鎌を想像する。だがどうせなら、可愛らしい見た目にしたいものだ。


 うんうんと唸っていると、急に手元に違和感を覚える。そのまま手を握ると、何かを掴んだ。


「成功です。ミミカさん、目を開けてみてください」


「わっ」


 ミミカの手元には大きな鎌があった。それも、ピンク色でつかなんかはデコレーションされていてキラキラと眩しかった。


「……とっても、個性的で良い鎌だと思います」


「めっちゃ可愛いー!」


「まぁ大事なのは、実用性ですから形はなんでも」


「なんか言った?」


「い、いえっ」


 死神はそういうと急に辺りを見渡し始めた。


「ミミカさん、早速ですがあちらをご覧ください」


 死神が窓の外に鎌を向ける。ふわふわと浮いた体を窓に近づけて外を見ると、遥か遠くの民家に小さな炎のようなものが視えた。


「何か視えるよ」


「あれも、人魂です。誰か亡くなったのでしょう。ミミカさん、わたくしについてきてください」


「え?」


 そういうと、死神は窓をすり抜けて外へと飛び出していった。ミミカも慌てて窓に向かって飛び込む。思わず目を瞑ったが、何事もなく窓をすり抜けることが出来た。それに、空気の抵抗なんかも感じない。


 (わたし、空飛んでる!)


 ぐんぐんと上昇していると、死神が猛スピードで戻ってきた。


「ちょっと、勝手にどこかいかないでください!」


「それはこっちの台詞なんだけど……」


 死神がしつこいので、ミミカは上昇を止めて後に続いた。


 古い一軒屋は蔦が壁に絡まっているぐらい手入れされた様子がなかった。郵便受けに新聞紙やら封筒が乱雑に詰め込まれていた。その扉を、ミミカはするりと抜けて中に入る。寝室らしい部屋の敷布団の上に、お爺さんが倒れていた。その上に、人魂がぷかぷかと浮かんでいる。


「さぁ、ミミカさん。初仕事です」

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