第2話 周りはレズだらけ?

 家を出た私は、最寄り駅に向かって歩く。大体10分ぐらいかかるかな。お兄ちゃんは、自転車で大学に向かって行った。


1人でいると、さっきお兄ちゃんが言った事を思い出しちゃう。『近頃の女子は、レズにハマってる』なんてあり得ないよね?


「みのりちゃん、手繋ご~」


「良いよ~」


私の近くにいる小学校低学年ぐらいの女の子が、そんなやり取りをした。きっと2人は友達同士だね。


可愛らしいけど、私はそれぐらいの歳に友達と手を繋いだりしなかったな~。まさか、あの2人はレズにハマってる?


…いくらなんでも考え過ぎか。お兄ちゃんのせいで変な事を想像しちゃうよ。



 駅のホームで数分待ったら電車が来たので乗り込む。…車内は満員じゃないものの、席は空いてないな~。朝は混むから仕方ないよね。


「ねぇねぇ。この曲聴いた事ある?」


「……多分ないね」


近くにいる私と違う高校の女子生徒2人が、イヤホンを半分こしている。イヤホンの長さの割に、妙に顔が近いような…。


あの2人こそレズにハマってるんじゃ!? そう考えても良いよね!?


お兄ちゃんの言う事は100%嘘じゃないみたい。でも、まだ根拠が弱いな~。他にもそういう人がいれば信じて良いかも。



 高校に着き、私はいつも通り教室に向かう。…女子同士のボディタッチはたまに見るのに、普段より嫌らしく見える気がする。


こうなったのはお兄ちゃんのせいだ! 嘘じゃなくても、私に変な影響与えまくりだよ!


教室に入った私は、自分の席に座る。それから携帯で時間を潰していたら、HRホームルームを知らせるチャイムが鳴った。それを聞き、クラスのみんなが席に着く。


私がいるのは女子校だから、レズの兆候というかサインは確認しやすい。ハマってたらすぐわかると思うし、こっそりチェックしよう。


そんな事を考えてる内に、担任の江原先生が教室に入って来て教壇に立つ。


「今日の連絡事項は…」



 HRが終わり、私含むクラスメート全員が教室で着替え始める。1限は体育だからね。


中学は共学だったから更衣室に移動したけど、女子校はしなくて良いから楽だよ。


「咲。あんた、またおっぱい大きくなったね」


「そう言う麻美こそ」


あの2人、前から着替える時に胸とか下着の話をする事が多いな~。もしかしなくてもレズだね。やっぱりお兄ちゃんの話は本当だったり…?


「近い内に測って白黒つけないと」


「この前は負けたけど、今回はアタシが僅差で勝つと思うよ。麻美」


お互いの胸のサイズを知ってるの? 絶対レズでしょ!?


「夢ちゃん、ボンヤリしてどうしたの?」


そばにいた春菜ちゃんに声をかけられた。いつの間に…。


「何でもないよ」


「本当に胸大きいよね。あの2人」


「そうだね…」

クラスの1位と2位だもん…。


普段の授業や体育で胸の大きさを知る事はできないけど、水着姿を見れば大体わかるよね。2人と話さない人でも、それは常識だと思う。


「…大宮さん、アタシ達に何か用?」


私と春菜ちゃんの視線に気付いた咲ちゃんが声をかけてからこっちに来た。麻美ちゃんも一緒だ。


「何でもないよ…」

すぐに怒られないような言い訳を考えないと。


「夢ちゃんは、2人の胸を観てたんだよ」


「ちょっと春菜ちゃん…」

そんなストレートに言っちゃうの?


「アタシと麻美は幼馴染かつ“オッパイ仲間”だからね。大きさや形について話し合ったり実践してるから、注目してくれて嬉しいわ」


「実践って何?」


「こういう感じ」


春菜ちゃんの問いかけに対し、麻美ちゃんは私の胸を体操服の上から軽く揉む。初めて他の人に揉まれた…。


「何で私の胸を揉むの?」


「だって、あたし達のおっぱい見てたじゃない。おっぱいについて興味あるんじゃないの?」


私が気になるのは“レズ”であって、胸についてじゃないよ…。


「女に生まれた以上、オッパイに関心が向くのは良い事だわ。大宮さんと寿さんも“オッパイ仲間”にならない?」


「でもウチら、全然大きくないよ?」


春菜ちゃんはともかく、私は平均未満だと思うなぁ…。


「大切なのは気持ちだから。あたしと咲だって、中学の時は普通だったわ。ねぇ?」


「麻美の言う通りよ。このサイズになったのは、オッパイについて色々情報収集した結果ね」


「そんなのどこで収集するの? やっぱりネット?」


「それもあるけど、お姉ちゃんの影響かな。アタシと麻美には1歳上のお姉ちゃんがいるの」


「やっぱりお姉ちゃんはデカい?」


春菜ちゃん、さっきから興味津々だね…。


「もちろん。お互いお姉ちゃんを超えるのが目標よ。とはいえ、敵意は持ってないわ。仲間のようなライバルのような関係ね。麻美もそうでしょ?」


「ええ」


姉妹仲良さそうで良いな~。私はお兄ちゃんだから、そういう話はできない…。


「ねぇねぇ。もうそろそろ体育館行かないとヤバくない?」


春菜ちゃんが何とか気付いてくれたので、何とか遅刻せずに済んだよ。



 今日の体育はバスケだったんだけど、運良く春菜ちゃん・麻美ちゃん・咲ちゃんと同じチームになる事ができた。クラスの人数的に、4人チームになったよ。


試合をしてないわずかな時間で話したら『昼休みに詳しく話すわ』という流れになった。反対する理由はないので、私と春菜ちゃんはOKした。


お兄ちゃんが“オッパイ仲間”を知ったらどういう反応するんだろう? そんな事を気にする私だった。

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