お兄ちゃんにレズを教えられた私
あかせ
第1話 レズを知る私
「
リビングで朝食を食べている時、向かいの席にいるお母さんが声をかけてきた。
「わかった」
私はキリが良いところで手を止め、席を立つ。
「ありがとう。休み明けはいつもこうだからね、健吾は」
「あはは…。じゃあ行って来るよ」
「お願い」
私はリビングを出て、お兄ちゃんの部屋を目指す。
今日はGW明けの月曜日。連休だったから、お兄ちゃんはいつもより夜更かししてたみたい。部屋が隣同士だと、ゲームとかの音が少し聞こえるんだよね。
…お兄ちゃんの部屋の前に着いた。ノックしてみよう。
『コンコンコン』
………返事がないなぁ。多分まだ寝てるね。直接起こさないとダメっぽい。
「お邪魔しま~す」
私は小声でそう言いながら、お兄ちゃんの部屋に入る。
最後にお兄ちゃんの部屋に入ったのはいつだったかな? ハッキリ覚えてないけど、いつもよくわからないニオイがするんだよね。どこからにおうんだろう?
…なんて、考えるのは後! 早くお兄ちゃんを起こそう!
ベッドのそばに行くと、お兄ちゃんは抱き枕を抱きながら横向きで寝ている。気持ち良さそうな寝顔だな~。
「う~ん、あいちゃん・あこちゃん。好きだよ~」
大きい寝言。良い夢見てるところ悪いけど、起こさないと!
「お兄ちゃん、そろそろ起きて」
「……」
全然反応しない。もっと強く揺すらないとダメだね。
「お兄ちゃん起きて!!」
「あいちゃん・あこちゃ~ん♡」
お兄ちゃんはそう寝言を言いながら、寝返りを打って私に背を向ける。起きる気配ないんだけど…。
なんて思った時、寝ているお兄ちゃんのそばに1冊の本があるのに気付いた。少し気になったので表紙を見ると…。
「何これ!?」
2人の女の人が、キスしながらお互いの胸を揉んでいる。これってもしかして…。
「夢もレズに興味があるのか?」
いつの間にか再度寝返りを打ったお兄ちゃんが、私の顔を見て声をかけてきた。
「きゃ!? 急に声かけないでよ! ビックリするじゃない!」
「ごめんごめん。そんな事より、レズに興味あるのか?」
「興味なんてないよ。表紙に驚いただけ」
「この本は最近買ったばかりでな。俺をレズの世界に引き込むぐらいエロかったぜ」
「そう…」
私は何を聞かされてるんだろう?
「表紙の左側にいる黒髪があいちゃん、右側の金髪があこちゃんだ」
「それって、寝言の…」
「寝言に出ていたか。レズの間に入る男は邪道だが、夢の中で暴走したようだ」
私、こんな話聴き続けて良いんだっけ…?
「…お兄ちゃん! そんな事より、いい加減起きないと遅刻するよ!」
「そんな時間か。最後に、夢に言っておきたい事がある」
「何?」
「近頃の女子は、レズにハマってるらしいぞ。この本に書いてあった」
「そんな訳ないでしょ…」
私の周りに、それらしき人は1人もいない。
「わからんぞ~。『事実は小説より奇なり』と言うじゃないか。お前の友達も既にレズの虜かもな」
もしかして、私が知らないだけで本当にみんなレズにハマってるの?
「…今はこれぐらいにしよう。行くぞ、夢」
「うん…」
モヤモヤした気持ちを抱きながら、私はお兄ちゃんの部屋を出てリビングに向かう。
「健吾、あんた起きるの遅すぎ!」
リビングに着いて早々、お母さんがお兄ちゃんを叱る。
「ごめんごめん」
あの話をしなかったら、お母さんが怒る事はなかったと思うな…。お兄ちゃんは朝食を食べ始め、私は再開させる。
朝食後。私は制服に着替えながら、お兄ちゃんが言った事を振り返る。
友達やクラスメートがレズにハマってるしれない…。仮にそうでも、デリケートな内容だからそれがわかる事はしないと思う。
お兄ちゃんが言う事は本当なのかな? すごく気になるから頭がグルグルするよ。白黒つけないと、ずっとこんな感じが続いちゃうの…?
……決めた! 今日友達に訊いてみよう。怪しまれないようにさりげなくって感じなら良いよね。もし違ったら、お兄ちゃんに文句言わないと!
朝の準備を終えた私は家を出て、登校し始める。
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