第2話

### 第一章(続き)


そんな中、彼女は少し変わってしまった。配信活動が忙しくなるにつれて、彼女の優先順位が徐々にずれていくのを感じた。生後8ヶ月の我が子を配信に出演させることはあったが、子どもが泣いている時にも、彼女はそのまま放置して配信を続けることが多くなった。


「今日は特別ゲストだよ!」と明るく声を上げる彼女の背後で、我が子は小さな声で泣いていた。視聴者からは「かわいい!」というコメントが流れる一方で、私は心の中で葛藤していた。子どもが求めているのは、母親の愛情や温もりなのに。


夜も、彼女は子どもを置いて配信活動を続ける日々が続いた。配信が終わった後も、彼女は視聴者とのやり取りや次の配信内容について考え込んでいる様子だった。私はその姿を見て、胸が痛む思いがした。


「お願いだから、もっと子どもに関わってほしい」と、ある晩、私は思い切って伝えた。彼女の目が一瞬驚きに満ちたが、すぐに冷静さを取り戻した。


「私はこれを頑張っているの。子どもには、将来のためにお金を稼がなきゃいけないのよ」と、彼女は言った。その言葉に、私は何も返せなかった。彼女が配信活動に情熱を注いでいることは理解していたが、それが子どもとの関係に影響を与えていることに気づいてほしかった。


しかし、彼女は何もしなかった。私の言葉は彼女の心に届かなかったのだ。配信が彼女にとっての新しい居場所であり、アイデンティティの一部になっていることは明らかだったが、その代償として、家族との絆が薄れていくのを見ているのは辛かった。


次第に、私たちの間には言葉にできない距離が生まれていった。彼女の笑顔は配信の中では輝いていたが、家庭の中ではどこか影を潜めているように感じた。私は、彼女が本当に大切にすべきものを見失っているのではないかと、不安が募るばかりだった。


このままではいけない。私は、何とか彼女に気づいてもらう方法を見つけたいと思った。愛する子どもと共に過ごす時間が、彼女にとっても大切なものであることを伝えなければならない。


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