25
空気に、
自分の意識がまだ存続していることより、まずそれに
ゆっくり目を開ける。その
おそるおそる、もう一度目を開けてみる。様々な色の光の乱舞。目に大量の液体が
目を
泣いているのだった。
強すぎる光に目を細めながら、どうにか涙を振り払う。
何か柔らかいものの上に横たわっているようだった。
……空調装置。つまり機械だ。そんなものがある訳がない。どんな
アインクラッドではない。
俺は目を見開いた。その思考によってようやく意識が
したが体が言うことを聞かなかった。全身に力が入らない。右肩が数センチ上がるが、すぐに情けなく沈み込んでしまう。
右手だけはどうにか動きそうだった。自分の体に掛けられている
驚くほど
体の横に投げ出したままの左手を動かし、感触を探ってみた。
視線を周囲に向けてみる。小さい部屋だ。壁は
得られた情報から推測するに、おそらくここは病室のようだった。俺はそこに独りで横たわっている。
宙に上げたままの右手に視線を戻した。ふと思いつき、中指と人差し指を
何も起こらない。効果音も鳴らないし、メニューウインドウも出てこない。もう一度、今度はもう少し強めに振ってみる。
と言うことは、ここはSAOの中ではないのだ。ならば別の仮想世界だろうか?
しかし、俺の五感から得られる圧倒的な情報量は、先ほどからもう一つの可能性を
現実世界──。その言葉が意味するところを理解するのには時間がかかった。俺にとっては、長い間あの剣と
では、俺は
──そう思っても、さしたる
それでは、これが
そうだ──俺は、あのまま消えてもよかった。白熱する光の中で、分解し、蒸発し、世界と溶け合い、彼女とひとつに──
「あ……」
「あ……す……な……」
アスナ。胸の奥に焼きついていた痛みが鮮烈に
夢だったのか……? 仮想世界で見た美しい幻影……? ふとそんな迷いにとらわれる。
いや、彼女は確かに存在した。
そう思ったとたん、彼女への
全身の力を振り絞って起き上がろうとした。そこでようやく頭が固定されていることに気づく。
俺は上体を起こし、手の中にある物体を見つめた。濃紺に塗装された流線型のヘルメットだった。後頭部に長く伸びたパッドから、同じくブルーのケーブルが延び、床へと続いている。これは──
ナーヴギアだ。俺はこれによって二年の間あの世界に
この内部に、あの世界の記憶
多分、二度と
胸の奥で
ふと、遠くざわめきを聞いたような気がした。耳を
確かに大勢の人の話し声、叫び声が聞こえる。ドアの向こうで
アスナがこの病院にいるかどうかは分らない。SAOプレイヤーは日本中に居ただろうから、可能性で言えばここに収容されている確率はごく低い。だが、まずはここからだ。たとえどれだけ時間がかかろうと、きっと見つけ出す。
俺は
点滴の針も引き抜き、ようやく自由の身になると足を床に付けた。ゆっくり力を入れ、立ち上がろうと試みる。じりじりと体が持ち上がったものの、すぐに
点滴の支柱に
それだけの動作で息が上がってしまった。二年間使われなかった
早く、早く、と
愛剣の代わりに点滴の支柱を握り
(ソードアート・オンライン1 終)
ソードアート・オンライン @REKIKAWAHARA
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