第2話転校生の挨拶(西園寺言葉視点)
ウチは今、とても緊張している。
転校初日なのだ。
女子高生にとって、ファーストインプレッションはとても大事。
廊下で担任の先生が呼んでくれるのを待っている。
担任の先生は、下宿先の長女さんだった。
下宿先の息子さんも一緒で気が楽といえば楽。(どちらともうまくやっていけそうだ)、とも思う。
メイクも気合を入れてきた。
職業病の睡眠不足を隠すために病み系というか、地雷系よりのギャルメイクだが。大ぶりのピアスもつけている。香水は、無難に柑橘系の物をほのかに香る程度に。
府内屈指の進学校――ギャルに厳しい学校じゃないといいのだけど……。周囲になんて言われようと……これが、“ウチ”なの。それは、
「では、新しいお友達を紹介します〜。西園寺さん〜」
来た!
ガラガラと教室の扉を開けて入る
クラスメイトの視線がウチに集中するけど……
その内の一つが異様だった。ジトーっとへばりつくような……ゾッと戦慄するような女の視線。
(妖気? 怨念?)
思わず、戦闘態勢をとりそうになる。
(でも……多分。アレは絶対、目をあわせちゃダメな奴)
まずは、陰陽師としての直感。
それから……
(どうして?)
素朴な疑問。
このクラスには、下宿先の姉弟が……優秀な陰陽師がすでに2人もいるのだ。結界も張ってある。
(どうして、こうもこの教室の陰陽のバランスは陰側に狂っているの? あの怪異、もしかして……特級かしら?)
特級の怪異など見たことが無い。ゆえにその脅威も測り知れない。
「じゃあ、自己紹介いってみよ〜」
陽気な担任の声。(頑張るんだぞい)的な謎のガッツポーズ。
ウチは、クラスに満ちる特級の妖気と担任の陽気でテンパる。
「
結果。大事な自己紹介が、とてもそっけないものになってしまった。
目力を強調した地雷系よりのメイクも相まって、「よろしく」が「夜露死苦〜!」とみんなを威圧したように聞こえたかもしれない。そんなつもりは、まったくなかったのに……。
コトノハという古風な名前が気に入らないという理由も少しはあるけど。
(最悪っ)。転校初めから、気分が落ちた。
♠♠♠
「じゃあ、席は窓際のいちばん後ろね〜」
お隣は……マコト君か。
「よろしく、コトノハさん」
「こちらこそよろしく、マコト君っ☆」
土日を一緒に過ごしたおかげか、下宿先の息子さんとは、ややうちとけている。
この人。睡眠最優先って感じで、かなりドライな感じなのだけど。
(でも。それがいい)
他人の家に下宿。同年代の男子と同居。距離感としては、多少ドライなくらいがちょうどいいのではないか?
それに今は……マコト君の隣こそが、純粋に妖気も陽気もいちばん薄くて安心できる。
よく見ると顔立ちも綺麗でちょっとカッコイイし。
(お隣の異性が落ち着いた雰囲気の陰陽師で良かったぁ☆)と、心底安堵できる特殊な環境。それが、ここ。洛中高校1年A(アドバンスコース)組である。
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