お祀り

ライデン

お隣の天使様?NO!〝エンジェル様〟です。

第1話陰陽和合

 ここ京都では、蒸し暑く寝苦しい夏が終わり、心地の良い秋晴れの朝が訪れている。

 ただ。高校生にとっては休日であるはずの土曜日の昼近くの寝覚め(時計をみたら、朝の11時を少しまわった所だった)は、最悪で……。


 身体が鉛のように重く、頭も痛い。目の下にはクマも出来ているだろう。



(世界なんて、さっさと滅んでしまえばいいのに)


 心の底から、世界を呪う。


 右眼をてのひらで覆い隠しながら、「世界の危うい均衡を保っているのは、俺。 ……しかるに。この世界は、本当にクソだ! 守る価値など一片もない!!」と言ったら、中2 だと思われるだろうか?


 俺の名前は、足利誠あしかがまこと。京都市立洛中高校の1年生だ。断じて……いや、かろうじて(?)、中2 などではない!


 実際。世界のバランスを全てとはとてもいえないながらも、保っている。うん。京都市中京区のごく一部くらいは。

 その仕事のせいで、普段から大変寝不足なのだ。



 (え、どういうこと?)と、思われるかもしれない。


 こう説明したら、どうだろう?


 陰陽いんようことわり――世の中の全ての事象は陰と陽に分けられる。そして、“陰陽和合いんようわごう”という言葉があるように、陰と陽の調和が取れている世界が理想。しかし、人は陰に偏りがちな存在で……陰に偏りすぎた世界は、怪異を生む。怪異が世に溢れないのは……魑魅魍魎ちみもうりょう百鬼夜行ひゃっきやこうにならないのは、それを解決している存在がいるはずだよね?、と。

 “陰陽師おんみょうじ”――影に潜み、世界の闇を払う者。その1人が俺というわけ。



♠♠♠


 ノロノロとベッドから起きだし、洗面台で顔を洗っていると……トラックのような大型の車両がキーッと家の前にとまった音がした。


(そういえば、今日だったか)


 今日から、新しい同居人が引っ越してくる。

 その同居人は、俺と同じ歳の綺麗系女子らしい。


「同級生の女子と“おはよう”から“おやすみなさい”までずっと一緒とは、うらやまけしからんですな〜」


 この件が決まった時、俺に大変おっさんくさい絡み方をしてくれたのは、俺の姉。10歳離れた不肖ふしょうの姉だ。


(問題は、そこじゃない)


 俺にとっての懸念けねんは、同業者として一緒に仕事をすることになるその子が、俺の仕事をいい意味で半分に減らしてくれるのか? 逆に、悪い意味で倍に増やしてくれるのか? ってこと。←“ To be or not to be. that is the question!”、四字熟語にすると……“死活問題!”である。

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