第16話 作戦会議
ノアディルとリア、ルミナが話し合っている最中、部屋の隅で眠っていたヴィオラが身を起こし、こちらに歩み寄ってきた。
彼女は髪をかき上げながら、少し眠そうな顔でぼやいた。
「なんだか寝ている間に状況がすごく変わっているわね……」
ノアディルは軽く肩をすくめながら「まぁ、いろいろあった」と返事し、ルミナについて簡単に説明を始めた。
ヴィオラはじっくりとルミナを観察した後、口元に微かな笑みを浮かべて「ふーん、よろしく」と言うと、自分の名前を名乗った。
ルミナも
「ルミナだよ!よろしくね、ヴィオラお姉ちゃん!」
と元気よく応じる。
ヴィオラはその言葉に一瞬驚いたが、何も言わずに頷いた。
自己紹介が一通り終わったところで、ヴィオラが話を切り出す。
「一人増えたけど……計画はそのまま進行する形でいいわね?」
ノアディルもリアも、それぞれ「問題ない」と答えると、
ヴィオラは満足げに頷き、
「じゃあ、次の準備を始めましょう」
と言った。
――地図を広げて相談
4人は地図をテーブルに広げ、今後の動きを相談し始めた。
地図には、たこ型四角形の大陸が描かれており、各地の地名がざっくりと書き込まれている。
ノアディルはこの世界の地理に全く疎いため、ヴィオラが説明を補った。
「ここが今いる場所ね」
ヴィオラが指さしたのは、大陸の南端に位置する細長い土地だった。
「どの国にも属していない地域が広がっているわ。荒野や小さな集落が点在してるだけで、国としての秩序はないわね」
「で、大陸の中央をこの大きな川が真っ二つに割っているわ」
ヴィオラは川の線を指でなぞりながら続けた。
「この川には二本の大橋があるの。東は魔法士の国、西は戦士の国に繋がってる」
「戦士の国の北には僧侶の国がある。そして、それらの国々に隣接する形で勇者の国が中央に存在しているわ」
ノアディルは地図を眺めながら、
「必ずどちらかの国を通るわけか……」
と呟いた。
それを聞いたヴィオラは地図の東側、魔法士の国に繋がる橋を指し示しながら提案した。
「私が魔法士だから、魔法士の国から入国する方が何かと都合が効くと思うの。入国手続きも簡単になるし、協力者を探しやすい」
「俺はこの世界のことは分からない。ヴィオラの提案に賛成するよ」
ノアディルは頷きながら答えた。
ルミナも「ルミナもお兄ちゃんと一緒ならどこでもいいよ!」と元気に声を上げた。
リアも頷き、「じゃあ決まりだね。魔法士の国に向かう準備を始めよう」と締めくくった。
4人の間で魔法士の国へのルートが決まり、彼らは地図を巻き戻して次なる準備に取り掛かることにした。
ヴィオラは荷物を整えながら
「それじゃあ、移動のための食料や水を確保しておきましょう」
と提案し、リアが
「ボクが装備の点検もしておくね。ナノマシンも解析しなきゃ!」
と返事をした。
ノアディルは一方、少し離れた場所で再びルミナに話しかけた。
「ルミナ、行き先が決まったけど、ちゃんとついてこられるか?」
ルミナは大きく頷きながら笑顔で答えた。
「もちろん!お兄ちゃんと一緒なら何でもできるもん!」
ノアディルはその明るさに微笑みを浮かべつつ、
心の中で彼女の無邪気さの裏に潜む過去と、自分が知らない事実に複雑な感情を抱いていた。
・・・
4人が魔法士の国への準備を進める中、ヴィオラがリアに尋ねた。
「ところで、リア。このナノマシンの解析ってどれくらいかかるの?」
リアは工具を片付けながら、
「現時点では何とも言えないかな……。でも、ざっくり見積もって1年くらいは欲しいかも」
「1年も!?」
ヴィオラは目を見開き、驚きの声を上げた。
リアは少し申し訳なさそうに続けた。
「ナノマシンの数が限られてるからね。解析にもどうしても時間がかかっちゃうんだ」
その会話を聞いていたルミナが、嬉しそうにポケットから何かを取り出した。
小さな万年筆のような形をした注射器が二本、キラリと光る。
「それならこれを使う?」
「これは何?」
とリアが訊ねると、ルミナは得意げに胸を張って答えた。
「お兄ちゃんの元がここに入ってるよ!」
「え?!」
ヴィオラは一瞬赤面し、戸惑いながらノアディルの方をちらりと見た。
ノアディルは苦笑いしながら
「えっと……NOAが入ってるってことだな?」
「そう!」
ルミナは元気よく答えた。
リアは注射器を手に取り、中の液体を光に透かして見ながら歓声を上げた。
「すごい!これ、二本ともフルチャージされてるなら解析期間を半年くらいに短縮できるかも!」
「それでも半年……」
ヴィオラは額に手を当てて溜息をついたが、すぐに顔を上げて言った。
「半年……ぼーっとしてるつもりはないわ。その間にできることをやりましょう」
「うん、そうだね!」
リアが同意し、ノアディルも頷いた。
ルミナはそんな3人を見て
「ルミナもお手伝いする!」
と笑顔を見せる。
その無邪気な声が、重くなりがちな空気を少し和らげていた。
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