第3話 魔法士ヴィオラ

「ノアディル・ヴェイガーね……私はヴィオラ・クロウよ」


 お互いに名前を名乗った後、ヴィオラの表情が急に驚きに変わり、目を見開いて


「というより! 最上級魔法で無傷ってどういう事なの?」


 と問いただす。ノアディルは一瞬戸惑い、T-0に脳内で「最上級魔法って?」と質問した。


 T-0は、先程解析した書物の情報から、魔法とは体内および周囲に漂う魔素を使って超常現象を引き起こす技術であり、

 最上級魔法は五つのランクの中で上から二番目に位置する最高峰に近い魔法であると説明する。


 ノアディルは「当たらなかっただけだ」と釈明するが、

 ヴィオラは焦げ跡などを見てすぐにそれが嘘だと見抜き、


「そもそもその服装は何?腕に付けている物は何?」


 と質問攻めにした。


「後で全部答えるから、ひとつだけ教えてくれ。俺くらいの歳の少女を見かけなかったか?」


 ノアディルは質問を遮りながら言った。


「いや、見てないわね……」


 ノアディルはその回答に落胆した。


「すまないが、まずはその子を探さないといけない」


 そう言って外へ出ようとした時、ヴィオラも「待ちなさいよ!」と一緒に扉を出た。


 その瞬間、周囲に強風が吹き荒れた。

 ヴィオラはすぐに異変に気づき、


「まずい、大気の魔素が乱れているわ。魔素が乱れると魔物が集まってしまう。発生源は……こっちね」


 と先に進んでしまった。

 それ見たノアディルは、少し迷いながらも後を追いかける。


「魔素が乱れるってどういうことだ?」

「原因は色々だけど、多くは高濃度の魔素が固まって急にできた結晶が原因よ」


 ノアディルの質問にヴィオラはそう言って説明をし始める。


「その結晶を中心に嵐のように魔素が回転し、その中心を目指して魔物が集まってくるの。そして、もし結晶を魔物が取り込んだら、その魔物はより凶悪で強くなるわ」

「魔素か……俺には何も感じないな……」


 ノアディルには魔素を感じ取ることはできないが、ヴィオラの焦りようから異常事態だと理解し、二人で魔素の乱れの根源と思われる場所へと向かった。


「な……既に多くの魔物が集まっているわ。にしても中心部にあるあれは一体……」


 ゴブリンのような魔物が集まる中心には、高さ5メートルほどのアンテナ付き鉄塔がそびえ立っていた。

 そして、その最上部には、リアがしがみ付いており、魔物に向かって、


「あっちに行け!」


 と叫びながら工具を振り回していた。


 ノアディルはそれを見て「リア!」と大声で叫び、リアがそれに気づく。


「今助けるからな!」


 そう言うノアディルを、


「こんな大勢の魔物、無理だわ死んでしまう! とはいえ私の魔法はあの子を巻き込んでしまう……!」


 とヴィオラは焦って止めようとするも、ノアディルは止まらなかった。


「T-0、全員補足する。フルチャージだ」


 ノアディルはT-0を射撃モードに切り替えチャージをし始めた。

 その間、義眼で大量の魔物を全てロックオンした後、上に向かって銃を撃った。


 すると、無数の閃光が魔物へ向かって飛んでいき、全てを一瞬で絶命させた。


「残りエネルギー0%。充電するまで射撃は不可能」


 T-0はそう言ってブレードモードに切り替わった。

 ノアディルはすぐに鉄塔へ駆け寄り、リアを救出した。


 ヴィオラはその光景をただ唖然と見ていた。

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