第3話 クサさん
疲れた。何にも考えたくない。
この日本の経済の悪さ。
人手不足も深刻だ。
それなのに、規制ばかりを押し付けてくる。
会社にはこれまで一緒にやってきた奴等が
一生懸命やってくれてる。
それゆえに、自分だけ身軽になれない。
ビジネスホテルに帰る。
ふぅー。
ひとりの時間になれるのは有難い。
好きなタバコをくゆらせて、ソファーに身を任せる。昭和歌謡を聴く。
これが俺にとっての切り替えだ。
「ほたほた〜や〜🎵。
ほ〜た〜ほ〜〜た〜や〜🎶。」
おい、パソコンがバグったのか?
昭和歌謡なんだぜ。なんだよ、今のは?
パソコンの画面に自転車が写り込んでいる。
良くみたら、自転車の後ろに家載せてる。
YouTubeなのか?
「あのう、ほたほたやです。
こんばんは。」
俺に話しかけてる?
「そうです。俺さんに話しかけてますよ。
ホテルの下においでください。うにゃ。」
なんだ?うにゃって。
何だかしらねーけど、俺様を呼び出すなんて
学生以来じゃねぇか。
こっちとら、まだまだ喧嘩で鍛えた拳は
衰えてねぇー。
俺は勇んでホテルの下まで行った。
「おい!人を呼びつけたには、それなりの覚悟はあるんだろうな!」
「ははん。イラついてますね。
俺さんのからだには、毛玉が絡まってボールみたいになって詰まってますね。」
「毛玉?が詰まってる?
いい加減な事を言うんじゃねぇ!」
「まあまあ、そうカリカリしないで下さい。
私は猫又と言う魔物です。
からかってませんよ。
俺さんは、いろんなモノを飲み込んでますね。
それが玉になってからだを疲れさせてるんですよ。」
「猫又?魔物?
俺はな、悪魔であろうと閻魔大王だろうと怖くはねぇ!猫の魔物なんてちゃんちゃらおかしいわ!」
「猫又の話を聞かない人ですね。
とにかく、俺さんに一晩、クサさんをお預けしましょう。クサさんの姿は俺さんにしか見えませんから心配いりません。
お代はチュール3本を窓ぎわに置いてくだされば取りに伺います。
朝になり、クサさんがドアをカリカリしたら帰らせてくださいね。
では、どうぞ。うにゃ。」
猫又はふさふさの茶色の毛をした猫を
俺に抱っこさせたと思ったら、猛スピードで
走り去った。
俺は、、、。
実は猫好きなのだ。
うおーっ、かわいい目で見つめるじゃないか?
早速、部屋に連れて帰った。
ソファに座ったら、ふさふさ茶色の猫が膝に乗ってきた。
頭を手に擦り付けてくるじゃないか。
撫でろってことか?
よーし、ほら、どうだい?
喉がゴロゴロ鳴ってるぞ。
気持ち良さそうにしてるなぁ。
しばらく撫でていたら、ふさふさ茶色猫は
急にオエオエするじゃないか。
「おい、大丈夫かい?
どうしたんだ?気持ち悪いのか?」
俺はオロオロしながら背中をさすってやるしかできない。
ふさふさ茶色猫は、オエと苦しそうにしたら
毛玉を吐き出した。
何個も何個も。
疲れきったように猫は寝てしまった。
「かわいそうな事をした。今夜はゆっくり
おやすみ。」
俺はベットに寝かせてやった。
ソファで寝ていたらしい。
ふさふさ茶色猫が手をペロペロしたので目が覚めた。
「元気になったかい?」
「俺さん、あんたの毛玉は吐いてあげたにゃ。
もう、疲れはとれたにゃやろ。」
ふさふさ茶色猫はそう言ってドアをカリカリ。
あ、帰るんだね、わかったよ。
ドアを開けたら、ふさふさ茶色猫が言ったんだ。
「毎度にゃりーー。」
それからだ。何だか、あれこれ考えてたことが
すっきりしたんだ。
からだが軽くなって、何しろ気分がいい。
こんな朝は、軽やかな音楽にコーヒーだな。
クサさん、ありがとうよ。
俺の溜まってたもんを代わりに吐き出してくれたんだよな。
チュール10本はお礼しなきゃな。
猫又さんよ、また、頼むぜ。
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